下の子を出産するために保護者が育児休暇を取得することで、保育園に通っている上の子が退園しなくてはならなくなる『育休退園』が全国的な問題となっている。津市でも前葉泰幸市長が公約として育休退園解消を掲げ、調整を進めてきたがである待機児童の解消など必要な条件が整えば、来年の4月1日より改善される可能性が見えてきた。

 

育休退園の問題が特に大きく取り沙汰されようになったのは今年8月。埼玉県所沢市に住む女性が下の子の出産のために育児休暇を取得したところ、上の子の退園を求められたことを不服とし、さいたま地裁に執行停止を申し立てたこと。その後、同地裁は執行停止を認める判決を出したことで全国的に育児退園の撤廃に向けた取り組みを進める自治体が増えている。
津市でも現在、育児休暇を取得した保護者に保育園に通う2歳以下の子供がいる場合は原則として退園を求める対応をとっている。家庭の事情などで、どうしても難しい場合を除き、年間約30名ほどが退園を余儀なくされている。
これに対し、前葉市長は選挙公約の一つに育休退園の解消を掲げており、再選後に担当部局と調整を進めてきた。現在、開会中の平成27年第4回津市議会で辻美津子議員=市民クラブ=の質問に対し、「定員の確保について目途がつくならば、4月1日より撤廃できるよう最終調整している」との答弁をしている。
この問題で大きなハードルとなっているのは、やはり待機児童の存在。津市では昨年の10月現在で98人の待機児童がいるため、私立保育園の経営者にも協力を呼びかけながら定員の拡充に取り組んでいる。その成果もあり、平成23年度から数えると私立が545人、公立が100人の定員を増加。今年度の定員は6010人になった。今年度も新規施設の認可や既存施設の拡充を進めており、これで待機児童の解消に至れば、育休退園の撤廃が実現するという流れになっている。
この育休退園問題に対し「保護者が育児休暇を取っているならば、努力次第なのでは」という意見もあるかもしれないが、そうとも言い切れない側面がある。保護者の負担面もちろんだが、保育園を退園した子供が毎日、友達に囲まれていた環境から、家庭の中だけで過ごす環境に変わることで大きなストレスを感じ、発育に悪影響を及ぼすことも少なくないからだ。保育園での生活は育ちの場でもあると同時に、学びの場でもある。これは看過できない要素であるはず。
また、保護者の負担の軽減という観点だけで言えば、保護者の親の力を借りる事も考えられるが、それも社会情勢の変化によって難しくなっている。核家族化という単純な構図だけではなく、保護者の親と同居していたり、近所に住んでいても力を借りにくい状況が浮き彫りになっている。
国は『一億総活躍』をスローガンに男女や年齢に関係なく、社会で活躍することを推進している。それにも反映されているが、保護者の両親共に、なんらかの形で働いている家庭が増えている。育児を手伝うには、仕事を辞めなければならなくなることもあり、それは社会の流れに逆行する。育休退園の解消は保護者だけでなく、その親世代が社会で活躍できる環境づくりにも繋がることにもなる。
待機児童の解消という課題と、来年度の入園状況に左右されるため、来年4月1日から育休退園が撤廃されるかどうか、まだ言い切れないのが現状だ。
育休退園があることで、第2子以降の出産が阻害されてはならない。そして前述の通りそれが退園する子供や、保護者の両親にまで至る包括的な問題でもある以上、一刻も早い解決が望まれている。