暖冬とは言え、寒中。今が一番寒い時期である。そんな日の田んぼに、動くものを見つけた。道を挟んで右に一台、左に一台のトラクター。田んぼの土を耕している。
トラクターの向こう側の田んぼの色が違う。立ち枯れた稲株が鋤き込まれ、黒々とした土の区画ができている。
これが寒起こし。我が家は田んぼを所有していないけれど、ちょっと出たら田んぼが見えて、田んぼの変化によって季節を感じることが多い。寒起こしは冬の風物詩である。
寒起こしで、土をひっくり返すと、土の中にぬくぬくと隠れていた虫やサナギが凍死する。雑草の根も枯れるという。冬の作業が、春の農薬の減量に役立つらしい。田植えから刈り取りまでが稲作のようだが、見逃しがちな作業がこんな季節にある。
どんな仕事にも同じような地味な作業があるだろう。たとえば、営業や接客の仕事でも、お客様に会う前の情報収集や準備が必要だ。事務や研究の仕事でも、情報の記録や管理が必要だ。体や頭を使う目に見える形の仕事と、目立たない準備作業と。地味な作業の積み重ねが、目に見える結果につながる。
トラクターの後ろ側には何羽かの白や黒の鳥が見える。鳥たちのごちそうが掘り出されているのだろう。冷たい空気の中で、人も鳥もがんばっている。
(舞)