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先週に続き、今年、創業100周年の『㈱松阪鉄工所』=本社工場・津市高茶屋小森町=の加藤賢治代表取締役社長(45)にインタビュー。作業工具の本場・米国での事業や、社員達への思い、次の100年に向けた抱負などについて聞いた。 (聞き手は本紙記者・小林真里子)
──御社は1962年に米国法人を設立されましたが、これまでに海外事業においてどのような成功や困難がありましたか?
加藤社長 成功と言うほどの実績はありませんが、強いて言うなら、作業工具の本場の1つである米国で現地販売会社を継続できているのは、成功ではないかと思います。
それから、当社のオリジナル工具である「エンビカッタ」は世界中で普及し、配管工の必須工具にまでなりました。この商品は、「塩化ビニル管をハサミで切る」というアイデアと、そのアイデアを実現する機構を思いつくまでに非常に悩んだそうです。
現在は特許が切れ、世界で普及している商品は当社の商品ではないのですが、非常に便利で世界中のメーカーが製造するような工具を生み出せたことは、私達の誇りになっています。
そして困難についてですが、米国法人は現地の老舗メーカーが市場を押さえている中で進出したため、当初はユーザーに当社の商品を認知してもらうのが非常に大変だったと聞いています。当時は為替の関係で価格的に有利な面もあり、品質を全面に押し出して少しずつお客様を増やしていきました。
──モノづくりへの思いをお聞かせ下さい。
加藤社長 人の役に立つものをつくるというのは、楽しいし、嬉しいことだと私は思います。製造業に就きたいという人は同じ思いかなと。
我々は、工機器事業では、「仕事に自信がある・自信を持ちたい」と考えている職人の方々や、そういう職人を目指す方々に喜んで頂きたい、そして当社の商品を選んで頂きたい。社員がそう思えば、自然と、そんな商品をつくろうとこだわってしまうのではないかと思います。
精機事業においても、製造業のプロの方々がお客様ですので、「当社に依頼して間違いなかったと喜んで頂きたい」と思えば、自然と、こだわったモノづくりになっていきます。
──社内での技術・ノウハウの伝承や、社員教育はどのように行われていますか。
加藤社長 技術やノウハウは積み上がり、どんどん増えて進んで行かないといけません。増えるものを伝承するには文字や写真、映像でいつでも使える形にしなければと思っています。
その一方で、形式知(文章や図表などで説明・表現できる知識)として扱えない技能やノウハウもあるので、それらは基本的にOJT(=オン・ザ・ジョブ・トレーニング。現場で実際の業務を通じて行う従業員教育)で伝承しています。そして補足の形で、階層別・職能別・目的別教育も同時に実施しています。
──会社を支える社員の方々への思いをお聞かせ下さい。
加藤社長 本社が松阪市から現在地に移り50年も経っているため建物の老朽化が進んでいて、その点では決して良い職場環境ではないと私も思っているのですが、そんな中で笑顔を忘れず一生懸命にモノづくりに励む社員の皆を、私は誇りに思っています。
去年、経営理念をリニューアルしたのですが、そのうちの1つが、「仕事を通じてお互いが豊かになり、人として光り輝く舞台をつくる」というものです。社内にそんな舞台を幾つもつくり、一人でも多くの社員に光り輝いてほしいと思っています。
──今年開催される100周年記念行事や、今後の事業への抱負はいかがですか。
加藤社長 事業を100年続けて来られたのは、会社を築き発展させてきた先輩方・私達の商品やサービスを愛し使って下さるお客様・協力会社の皆様・地域社会・教育機関・行政・金融機関・株主・当社を支えてくれる社員やその家族、多くの方々のお陰です。
色々な記念行事を通じ、皆様への感謝の気持ちを社員全員が改めて持ち、次の新しい100年に向け良いスタートを切りたいと思います。
私も社長になったばかりですし、今は、急に事業を増やしたり広げるという考えはありません。自分達の得意なところを更に磨くことと、より信頼できて安心して頂ける製品づくりを、まずは目指したい。
そしてその中で、社会が必要としていて自分達の良さを生かせるところがあれば、広げていきたいです。
例えば今、国内の工場では人手不足、海外の工場では人件費の高騰という状況があり、ロボットを活用した生産へのニーズが急激に膨らんできています。我々はロボットを活用した生産を工機器事業で昔から行っているので、そのノウハウを精機事業で活かすとか、そういった広げ方ができれば良いと思っています。
──ありがとうございました。
2016年2月11日 AM 5:00
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