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墓参りに行けない人の代わりに寺院などが供養や墓の管理をする『永代供養』が津市内でも広がっている。核家族化で墓を受け継ぐ人が居なかったり、経済的な負担で墓を持てないなどの理由でこの形を選択する中高年層が多い。新しい弔いの形として今後も広まっていきそうだ。
近年、『永代供養』は都会を中心に、全国的にもニーズが飛躍的に増大。寺院だけでなく、イオンもサービスとして提供開始するなど注目を集めている。まとめて弔われるので、従来の墓と比べると、墓石や墓地の権利を購入するが必要なく、初期投資や維持費が低い。そして、なによりも自分たちの代わりに寺院などが供養を続けてくれることが最大の特徴。
ニーズ増大の背景にあるのは社会情勢の変化。核家族化に加え、少子化や晩婚化。また、兄弟の多い団塊の世代は本家から出て自分で世帯を構えている人も多く、墓を建てて維持するために新たに菩提寺の檀家になり、子供たちに託すことに抵抗を感じる人も増えている。また、本家でも子供が居なかったり、居ても遠方で働いているため、墓が誰にも管理されないまま放置される無縁仏となる前に自分の代で墓じまいをして永代供養をしてもらうケースもある。
津市大門の津観音でも境内に約3年前、永代供養碑を建立。真言宗醍醐派の別格本山であるものの、檀家を持たない寺で市民の憩いの場として広く親しまれてきた歴史から、寺で遊んだ思い出のある人からなど頼まれて遺骨を預かったり、永代供養をすることが時々あったという。その後、ニーズの高まりに合わせ、正式に受け入れを開始。宗教・宗派を問わず、受け入れており現在までに約60件の供養を行っている。永代供養料30万円で年会費・維持管理費などは一切発生せず、寺がある限り供養を続けていく。副住職の岩鶴密伝さんは「思った以上にご相談が多くて驚いた。預かった以上は、責任を持って供養を続けさせて頂く」と話す。市内の他の寺院でも永代供養を表に掲げることが増えていることも、ニーズを示す証だろう。
一方、通常の墓に目を移してみると市内最大の市営墓地である戸木墓園=津市戸木町=は戦後ほどなくにつくられ、今では1015区画があるが、常時20名以上の順番待ちと根強い人気がある。今のところ無縁仏は目立っていないが近い将来、確実に増加するので、なんらかの対策が求められている。中山間部など高齢者が多い地域の墓は、いずれ集落ごと無縁化してしまうことも危惧される。全国的には複数の遺骨を一緒に埋葬する合葬墓を設置する自治体も増えるなど、こちらも大きな流れに沿った動きがあるようだ。
大規模霊園を歩いていると、草が生い茂り、無縁仏と思われる墓を見かけることも少なくない。先行きが不透明な社会情勢が原因で結婚に消極的な若者も増加しているなど、自分の家の墓を代々受け継ぎ、次代へ伝えていくという価値観が唯一のものではなくなっている。今後も永代供養は弔いの一つの形として、より広く浸透していきそうだ。
2016年2月25日 AM 5:00
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