津市美里町に拠点を置く「NPO法人サルシカ」=奥田裕久隊長=では、津市大門のフェニックスビル1階(旧アレグロ)で、飲食店『おばんざいバルすみす』=女将・市岡寿実さん=を4月15日にグランドオープンする予定。同店の運営を通じ、美里と大門の両地域の活性化などを目指す。先月には県内外の延べ約50名のボランティアが内装工事に参加するなど、関係者の多大な協力を得て開店準備が着々と進んでいる。

 

先月27日、開店に向けて内装工事を行ったメンバー達 (後列右から2人目が奥田さん、前列右から2人目が市岡さん)

先月27日、開店に向けて内装工事を行ったメンバー達
(後列右から2人目が奥田さん、前列右から2人目が市岡さん)

「NPO法人サルシカ」のメンバーは県内外在住の580人で、津市美里町にある集落「平木」の、トレーラーハウスなどを備えた「秘密基地」が活動拠点。 以前から、コミュニティカフェを開いたり、一般向けに農作業体験付きの予約制カフェを運営しているほか、休耕田を活用した農業事業などを行うことによって、地元の活性化に貢献してきた。
そして今回の、津市大門に飲食店『おばんざいバルすみす』を新規開店する計画は、「サルシカ店舗プロジェクト」として昨年10月頃にスタートしたもの。
同店は〝飲んべえなおじさんと、グルメな乙女におおくりする〟がテーマで、夜に営業。床面積10坪弱ほどの小さな店で、奥田さんからコミュニケーション能力を見込まれた同法人のメンバー・市岡寿実さんが、女将として一人で切り盛りする。
このプロジェクトの目的はまず、津市の街中にある大門と、郊外にあり里山などの自然豊かな美里の、両地域を活性化すること。
もう一つは、同法人の資金と寄付金によって行うこの店の運営を、NPO法人としての安定収益に繋げ、スタッフに給与として還元すること。
これらを実現するには他の一般の飲食店と同様に、来店客に満足してもらえると共に利益を出せるよう妥協のない店づくりを行うことが不可欠だ。
そこで同店で提供する料理には、美里町で同法人や住民が作っている野菜や、三重県産の海産物といった安心・安全な地元の食材などを使う。また、デザートとして地元の店の人気スイーツを提供してそのスイーツの魅力を一層広め、互いのブランド力向上を目指す案も検討中。
さらに通常営業に加え、県内の食材の生産者を囲む会などのイベントも予定しており、三重の〝食〟の魅力を市内外の人に発信したり、食を通じて人が交流する場となることも期待される。
そしてこのような魅力的な店をつくるため、多くの関係者がボランティアで多大な貢献を果たしている。
まず先月の初めから末にかけて、延べ20日程行われた内装工事に、同法人のメンバー延べ約50人が県内外から参加。旧店舗の内装を基礎部分から一新し、内壁に漆喰を塗る作業や、電気工事なども行った。
また美里町に拠点を置く劇団「第七劇場」の代表・鳴海康平さんが照明をはじめとした内装デザインを担当するほか、津市美杉町の「三浦林商」がカウンターに使う杉材などを提供。今後行われるメニュー開発には、津の飲食店のシェフも協力する予定だという。
奥田さんは、周囲の協力に厚く感謝すると共に「皆で準備をすると、オープン前から店への愛情が違う。
マーケティングのプロも協力してくれているので、戦略もしっかりと立てられています。この店が、美里に人が来てくれるきっかけや、里山と街のパイプ役になれば」と語っている。また市岡さんも、「お客さん同士を、仕事でもプライベートでもお繋ぎできる店づくりをしていきたいです」と抱負を話している。
同法人が、農業などの既存の事業や、それらの事業を通じて培った人脈も生かし取り組んでいるこのプロジェクト。すでに多くの関係者が店のファンとなって応援しており、今後の展開に注目が集まる。