2016年4月

GWを前に、全線復旧したJR名松線応援企画として、本紙記者が先週20日、同線の全区間を列車で往復し、市のレンタサイクルで津市美杉町を観光する旅の魅力を体験した。津市も、4月29日~5月8日に同線の終点・伊勢奥津駅(津市美杉町奥津)と道の駅美杉・北畠神社(何れも同町上多気)を結ぶ無料臨時バスを運行する。この機会に、同線に乗って美杉町をはじめ沿線に出かけてみては。  (取材=小林真里子)

 

国指定の名勝・史跡「北畠氏館跡庭園」

国指定の名勝・史跡「北畠氏館跡庭園」

美杉名物の練養甘を作っている老舗の「東屋」

美杉名物の練養甘を作っている老舗の「東屋」

名松線は平成21年10月の台風で被災し、家城駅(津市白山町)~伊勢奥津駅間で鉄道が運休。沿線の人口減少の影響もあり元々、利用者が少なく、一時は同区間の存続が危ぶまれたが、先月26日に全線復旧した。
今後、同線を活性化する
には観光路線化が不可欠。
市によると、今月11日~17日の同区間の1日平均利用者数は300人弱で、被災前の約3・3倍に急増した。復旧直後で県内外から注目されており、GWも観光客誘客の絶好の機会だ。
今回は、そんな同線の乗車体験を全区間で楽しむため、朝、自宅の最寄り駅である津駅から近鉄で松阪駅に行き、同線の松阪駅9時38分発・伊勢奥津駅11時2分着の列車に乗り換え。晴れていたこともあり、多くの観光客が乗車していた。
同線の魅力の一つが、車窓からの様々な風景。この日も松阪の街や、新緑、日差しで光る清流の水面、見頃の八重桜など豊かな自然の景色が次々と現れ、ほかの乗客も「以前、車でこの辺りに来た時とは違う風景が見える」と喜んでいた。
伊勢奥津駅で下車後、まず近くの「お休み処かわせみ庵」に行き、お茶と笑顔でもてなしてもらい、あまごごはんを購入し、旬の竹の子の味噌汁を振舞ってもらい昼食にした。かわせみ庵の営業は通常土日だが、同線の復旧後、今秋まで毎日営業中。同線利用者などの憩いの場となっている。
続いて同駅前で、市の電動アシスト付き・無料レンタサイクルを借り、20分程こいで約4・6km先の「道の駅美杉」へ。ちなみに同道の駅のほぼ向かいには、自家製の野菜などを使い手間ひまかけて作られた定食や丼、うどんなどが味わえる「旬のお食事処みすぎ」がある。
道の駅で一休みし、13時に約1・2km先の「北畠神社」に向けて出発。途中にある「美杉ふるさと資料館」で地元の情報を収集してから到着し、参拝した。また社務所で、可愛らしい御守りを買うと共に、神社内にある国指定の名勝・史跡「北畠氏館跡庭園」の入園料を支払った。
同庭園の作庭者は細川高国と伝えられている。高国は室町末期の武将で、その娘は伊勢国司7代・北畠晴具の妻となった。武将の手による庭らしく素朴で豪放な魅力に溢れ、歴史の哀歓を秘めた景観をしばらく眺める。
その後、上多気の伊勢本街道沿いにあり、100年以上、「練養甘」のみを作り続けている老舗「東屋」へ。同店は中川康代さんと娘さんが営む(不定休)。練養甘は、北海道産うずら豆などを使い、かまどで薪を炊き調理するなど昔ながらの製法で半日かけて作るそう。さっぱりとした甘さが好評の美杉名物だ。
15時前に同店を出て、同道の駅で再び休憩。時間に余裕があったので美杉町八知の同線比津駅まで足を伸ばしてみた。その後、伊勢奥津駅周辺へ戻って伊勢本街道奥津宿を巡り17時15分発の列車で帰路に着いた。
美杉町には多気を含め、名所があるものの公共交通機関が不便で車以外では行きづらい地域が複数あり、同線に観光客を誘致する上でも大きな課題となっている。今回、無料レンタサイクルがその対策の一つとなり得ることを実感した。
しかし一方、日頃運動不足の私には、坂道の多いこのコースのサイクリングは電動アシスト付きでも体力的にかなり厳しかった。同様に体力や、高齢などの理由でこの自転車の利用が困難な人は少なくない。加えて、途中の飼坂トンネルの通行も危険。従って、臨時バスの運行は非常に有効な対策になりそうだ。
私はこれまでにも取材で何度も美杉町を訪れたが、今回、同線の発着時刻に合わせてゆっくり巡ることで各名所の良さを再発見できた。また列車内や訪問先で地元の方々と交流し、その素朴な優しさに感動した。今後も取材などを通じ、名松線や美杉町のこのような魅力をより多くの人に知ってもらえるよう努めたい。
なお臨時バスは定員53名で、列車の伊勢奥津駅発着時刻に合わせて1日4往復する。臨時バスとレンタサイクルに関する問い合わせは美杉総合支所地域振興課☎津272・8080へ。

 

GWに美杉町上多気の各地で催される行事を紹介。
《道の駅美杉》
◆敷地内の屋外で様々な商品が販売される(※天候により中止の場合あり)。
①4月29日~5月8日=普段商品を出品している事業所(東屋・藤田こんにゃくなど)が、通常は出品していない商品も販売。
②4月29日=四季折々の花を生けて同道の駅の和室に飾っている地元住民などが、花類を販売。
③5月1日=地元住民が菊芋の漬物、あられを販売。
◆地元のグループがGW中に苔玉作り教室を開催。
問い合わせは同道の駅☎津275・0399へ。
《上多気地区内で沢山の鯉のぼりが大空を泳ぐ》
4月24日~5月10日まで。津市商工会美杉支部多気地区の会員有志が揚げているもの。
《北畠神社の春祭り》
5月5日開催。
◆11時~、祭典=神前奉納演舞……柳生新陰流(第16代尾張柳生家当主)、宝蔵院流槍術(第21世宗家)。
◆神賑行事(雨天時は社務所ホールで)=▼奉納演舞(北境内舞台前)……柳生新陰流と宝蔵院流槍術(13時~13時40分)▼のど自慢大会(13時45分~14時45分)▼お楽しみ抽選会(14時50分~約15分)。
このほか地元団体による飲食の販売も。問い合わせは☎津275・0615へ。

講演する荒木康行社長

講演する荒木康行社長

昭和47年に行われた三重大学初の公開講座の受講者有志が中心となって翌年の昭和48年に設立され、毎月の学習会で、より良い都市環境の創造に向けた研究を行っている都市環境ゼミナール=伊藤達雄会長=は16日に開いた平成28年度総会で、㈱百五経済研究所代表取締役社長の荒木康行氏を招き記念講演を行った。演題は「伊勢志摩サミット、地域の取り組みと期待」。
はじめに、日本でのサミット開催と地域への経済効果について、2000年の九州・沖縄サミットでは事前の試算で約440億円、名護市の宿泊者数は2000年から2014年までに124万人と倍増したこと、また、2008年の北海道洞爺湖サミットでは、北海道全体で観光客が約2倍になり、約437億円の経済波及効果があったとし、伊勢志摩サミットの場合、昨年6月5日に誘致が発表されて以降、一気に認知度が高まったことから、開催を機に三重県をアピールできるを千載一遇のチャンス、と期待感を示した。
また、同経済研究所の行ったアンケートでは、サミット開催決定による影響に関して、開催地の南勢地域ではプラスの影響があると答えた企業が45%と高いものの、県全体では24%に止まっていると分析。また、交通渋滞や過剰警備、テロの脅威などを懸念する声もあると指摘した。
一方、サミットに関連した会場関連施設や駅などの公共施設、高速道路などのインフラが急速に整えられたことから、開催後もこれらを有効に使うことの重要性を示した。
その上で、「サミット開催で大きく変わったのが県民、地域の意識」とし、「どうやって迎えて、開催後に施設などをどう生かして、どう有効に使うのか?知恵を絞って、次に何を打ってでるのかを考える、という素晴らしい意識改革になった」と話した。
さらに記念商品として開発した、伊勢志摩地域が生産量日本一を誇るアオサ、アラメなど7種の海藻を使った「志摩あられ」が、志摩市周辺のホテルなどで既に2万箱以上売り上げた事実に触れ、「通常はこの手の商品は5千個売れれば成功だが、この商品は海女が休憩の時にあられを食べる習慣があることにヒントを得たのが良かった。こうやって、商品にストーリー性を持たせることが大事」とした。
続いてインバウンドへの交通機関や商工会議所、観光協会の対応なども紹介した後、サミット開催後(ポストサミット)の三重県の経済波及効果として、5年間で1110億円、その内、外国人観光客数増加による効果は185億円、国際会議の開催増加による効果は37億円にのぼると試算。
その上で「三重県への外国人宿泊客は年間38万人と全国で23位だが、伸び率は全国4位。まだ伸びしろはある」とし、インバウンドの急速な増加が見込まれることから、「今後は、サムライやゲイシャなど外国での典型的な日本のイメージを意識し、日本の歴史文化などに興味のある欧米の個人旅行客と、ショッピングと温泉に関心のあるアジアからの団体観光客、さらに日本人観光客など、様々な観光客に対し、規模の小さい宿泊施設や規模の大きいホテルが、それぞれの持ち味を生かし、どの客層をターゲットにするのかを考えること重要」と締めた。

◆三重県立津東高等学校吹奏学部・第20回定期演奏会 5月1日(日)13時半~(開場13時)、県文化会館大ホールにて。主催=同吹奏楽部、津東高等学校吹奏楽部OB会。予定曲目は=全日本吹奏楽コンクール2016年度課題曲より、ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲、ミュージカル「塔の上のラプンツェル」、ヒットメドレー2015、ほか。全席自由。入場料500円。県文チケットカウンター、岩田楽器店、同高校にて取り扱い。同校吹奏楽部☎059・227・0166堀内、西尾さん(平日のみ)。
◆鳥羽水族館のGWイベント「おいない!伊勢志摩の海展」 同館のジュゴンコーナー前で5月8日(日)まで開催中。伊勢志摩サミットを意識して改めて伊勢志摩地方の豊かな魚介類を集め、その魅力を、日本だけでなく世界各国から訪れる人たちに紹介する企画展。内容は①計7の水槽で生態展示=伊勢志摩の特産品や海の幸(イセエビやマガキ、海草のアカモクなど約15種70点)②ジオラマや解説版によるパネル展示=海女や漁師が使用する漁具や、伊勢志摩地方の郷土料理を詳しく解説、など。問い合わせは☎0599・25・2555へ。

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