5月5日~8日と13日~16日、芸濃町椋本の東日寺境内の特設野外舞台で、劇団『水族館劇場』が『パノラマ島き綺譚外傳 この丗のような夢』を上演する。主催=『芸濃町を芸濃い町にする会』。江戸川乱歩の名作のモチーフが芸濃町にあったという推論を原点に、〝現代河原者〟を自称する同劇団が自らの手でつくりあげた劇場で、サーカス的な迫力ある演出や詩的な台詞に彩られた唯一無二の芝居を構築していく。

 

東日寺に建設中の野外舞台の前に並ぶ劇団員たち

東日寺に建設中の野外舞台の前に並ぶ劇団員たち

「芸濃町を芸濃い町にする会」は、芸濃町椋本出身で東京で活躍する文筆家・伊藤裕作さん(66)を中心に設立。伊藤さんは還暦を期に地元と東京を行き来する生活を送りながら、東京の劇団の舞台を津市の劇場で上演してきた。そして、地元への恩返しという想いもあり、昨年には津市無形文化財である椋本獅子舞の継承に尽力する人々の姿をとらえた映画を地元の人たちとの会でつくった。その会を発展的に解散して同会を設立。日本で唯一の「芸濃(げいのう)」という名前を大切にしたイベントを企画している。今年は、旧芸濃町が誕生して60年に当たることもあり、特別なことをしようと温めてきた企画が、芸濃町椋本の東日寺境内で行う劇団『水族館劇場』の『パノラマ島綺譚外傳 この丗のような夢』だ。
〝現代河原者〟を自称する同劇団は、全国各地の神社や寺院の境内などに、団員自らの手で一から野外舞台をつくりあげる〝小屋掛け芝居〟にこだわりつづけている。サーカスや移動遊園地を思わせる大がかりな仕掛けや大量の水を使った派手な演出と、詩的な言葉に彩られた濃密な世界観は唯一無二で、各方面より注目を集めている存在。
同劇団の作・演出の桃山邑さんの完全描き下ろしの新作となる今回の劇の下敷きとなっているのは三重県出身(本籍地は津市)の小説家・江戸川乱歩の中編小説「パノラマ島綺譚」。この物語の中心人物は、若くして亡くなったM県T市出身の大富豪・菰田源三郎とその同窓生で容姿が瓜二つな主人公・人見廣介。菰田と入れ替わり、巨万の富を手にした人見が、離島を改造した人工の理想郷・パノラマ島をつくりあげていく中で起こる事件を描いている。M県T市はもちろん、三重県津市を指している。
この話と芸濃町を結びつけるきっかけは、伊藤さんが地元に戻るようになってから、椋本の歴史を勉強したことで浮かび上がってきた一つの推論だ。乱歩が大正15年~昭和2年にかけて雑誌・新青年でこの小説を連載するにあたって、津市やその周辺の芸濃町の取材をした可能性は高い。その中で駒越五良八が巨額の私費を投じて、人工のため池・横山池を造成したという話を人工の楽園であるパノラマ島をつくりあげる物語のモチーフにし、更に椋本出身で明治14年(1881)に製茶輸出で大成功を収めた駒田作五郎を菰田源三郎のモデルにしたのではという推論にたどり着いた。
今回の作品には、パノラマ島奇譚や、芸濃町にまつわる歴史や伝説がエッセンスとして散りばめられている。現在、劇団員が東日寺境内に「野外舞䑓 黒翁の走り」を建設中。高さ約12mのテント小屋の中に舞台と客席を設置。同劇団の真骨頂である大量の水を使うための仕掛けも施される。
劇のあらすじは以下。政治的亡命を余儀なくされ、パトロンの大富豪が住む村へと流れてきた都会の舞台女優。大富豪が生まれた地にある枯れ果てた池を巡る失われた神話を聞かされた女優は自らの主演での舞台化することを望むが…。
チケット発売中。公演日は5月5日・6日・7日・8日・13日・14日・15日・16日。各日19時開演(18時半開場)。全席自由席(各日17時半より津市芸濃総合文化センター前で整理券発行)。前売り券3500円は水族館劇場HPで予約するか東日寺で劇団員から直接購入可能。電話で希望日・枚数・名前・連絡先を伝えて3700円を当日清算する予約券もある。問い合わせは☎080・6412・4897へ。芸濃町民・在勤者・出身者は前売り限定で1000円に。こちらは芸濃地区社協☎059・265・4890へ連絡を。当日券4000円。