今年に入ってから(4月8日時点)の世界の各資産の騰落状況を見てみます。
株式では日経平均1万9000円から1万5471円(マイナス18%)、米ダウ1万7550から1万7811(1・5%)、独DAX1万0300から9600(マイナス7%)、上海総合3450から3000(マイナス13%)、ブラジル4万3000から5万1000(18%)、ロシア750から880(17%)。
為替ではドル円120円10銭から108円10銭(マイナス10%)、ユーロ円130円から123・80(マイナス5%)、豪ドル円90円から83・8(マイナス7%)、ブラジルレアル円30・38から30・10(マイナス0・9%)、ロシアルーブル円1669から1603(マイナス4%)。
債券では10年国債0・265%からマイナス0・08(0・345%低下)、米国2・25%から1・7%(0・55低下)、ドイツ0・6%から0・1%(0・5%低下)。
商品ではWTI37から40(8%)、金1060から1243(17%)となっています。
株式では先進国で唯一、米国と新興国が上昇、日本と中国、ドイツが安く、中でも日本株の下落が特に目立ちます。
為替ではマイナス金利策の日欧の通貨が逆に高くなり、利上げを実施したドルが安くなっています。新興国通貨の下落が止まっています。債券は総じて買われ利回りは低下しており、商品は上昇しています。
昨年12月に米国が9年半ぶりの利上げに踏み切り、当初の利上げペースは年4回と予測されていましたが、今年に入り利上げ後の世界経済の低迷、特に新興国経済の悪化が懸念され、2月には世界の株式が大きく急落し、債券が買われて金利が更に低下、WTIなど資源価格も安値を更新しました。その為、米国の利上げのペースを年4回から年2回にペースダウンする方向となってきています。
しかも日欧のマイナス金利の金融政策に限界が生じる一方、米国利上げが足踏みする中、緩和マネーは米国株や新興国株、資源に向かっています。実際に金融緩和策を行っている日欧より、皮肉にも利上げペースを遅らせる米国に資金が向かっています。
ただ1月から3月の日米欧の金融会合を注意深く観察して見ますと、これ以上通貨安競争をしないと暗黙の了解が形成されたといっても過言ではありません。 そのため、昨年まで5年間にも及ぶドル高が是正されてきました。世界景気の低下を防ぐためにも、米国利上げが見送られる中、ドル安は資源高となり、新興国経済の低下を防ぐため年初からの各資産の騰落はそれを如実に示しています。
海外勢は昨年12月以降、通貨ではドル売り円買い、日本株売り日本国債買い、米国株買いのシフトとなっています。
15年度の海外勢の日本株売買では、4月5月で3兆円買い越し、6月から9月まで4・2兆円売り越し、10月から12月1・1兆円買い越し、1月から3月5兆円売り越し、累計では5・1兆円の売り越しとなり、リーマンショック時の08年度4・2兆円の売り越しを上回り、ブラックマンディー暴落1987年度6・2兆円の売り越し以来、30年ぶりとなります。
最近、株式で1日の株価の上下幅が激しくなっていることが気にかかります。15年度株式先物売買が1400兆円と過去最大を更新しました。13年度や14年度の3割を上回っています。 これは先物取引の短期売買で値ざやを稼ぐ動きが強まり大荒れ相場となったことを示しています。
過去10年での1日の騰落幅ランキング、上昇幅の1位は15年9月19日の1343円、3位は16年2月15日の1069円、4位の16年1月22日は941円、下落幅の5位16年2月9日918円と、この1年間で上位5位までに多くランクインしています。
米国の過去3回の政策金利の利上げ時(94年1月の3%から95年6月の6%、99年5月の4・75%から00年12月の6%、04年5月1%から07年7月5・25%)の為替の推移では、利上げ実施から半年程度は円高ドル安となっています。
ドル円の幅では8円から19円、率にして8%から15%円高ドル安となり、その後、米国と日本の金利差を反映し徐々にドル高円安に転じています。
この3回の利上げ時の海外勢の日本株売買動向は、期間中累計では大幅買い越しとなっています。
主要各国の金融政策に限界が漂う中、今年は財政政策の発動が期待されます。国内では5月中旬に発表される1月から3月期GDPの内容次第で、伊勢志摩サミットで補正予算の規模拡大や、17年4月消費増税再延期などが発表される予定です。円高からの反転時期は6月中頃FRB会合での利上げ再開がポイントになります。
今後、世界景気が徐々に上向いてくるなら米国の利上げのペースが上がり、日米の金利差拡大によりドル高円安が進み、日経平均株価は上昇に推移することになります。いずれにしても海外投資家の売買が日経株価にとって最もインパクトのある指標となります。
今後、円安の推移で変わる企業業績の増益率の程度が、日経平均の昨年高値2万900円までのカバー率を決めます。
これからも日経平均株価は米国株と新興国株、債券の利回り、WTIなど資源の動きに翻弄されながら、他の動きを上回る上下を繰り返し推移すると思われます。