津市の『国民健康保険(国保)』の保険料が今年度より5年ぶりの値上げとなった。市は収納率向上など地道な努力をしてきたが、高齢化に伴う加入者減と医療費支出の増大による赤字で昨年度は約15億円以上もの法定外繰り入れを行っている。苦渋の決断とはいえ、21%の大幅値上げとなるため、加入者の生活にも少なからず影響を与えそうだ。

 

市町村が運営する国保だが、その大部分は運営状況が厳しく、国も平成30年に都道府県単位の運営に移行し、財政基盤の強化を図るとしている。その流れに漏れず、津市も合併から間もなく、基金が枯渇するなど厳しい運営が続いているが、今年度は5年ぶりに保険料を値上げすることとなった。一世帯当たりの年間保険料の平均額は平成27年度の9万3653円から平成28年度は11万1569円と21%の値上げ率。
その原因の一つは高齢化による加入者減に伴う保険料収入の減少。平成27年度平均の津市の国保の加入状況は、3万9884世帯の6万4201人。平成23年度平均の4万217世帯の7万383人と比べると加入者が大きく減っていることが分かる。それに伴い保険料の実質的な収入に当たる収納額も平成23年度の59億4800万円から、平成27年度の約54億4500万円にまで減少。国保は、この保険料収入に加え、市の一般会計からの法定内繰り入れと、国・県からの交付金などを加えて運営されているため、保険料収入の減少は死活問題。加入者の年齢層も平成26年度で65歳~74歳までの前期高齢者が43・5%を占めており、県の39・3%、国の36・2%と比べるとその差は顕著だ。
前期高齢者は医療を受ける機会も多いため、医療費支出は保険料収入の減少と反比例する形で加速度的に増え続けている。また、他の自治体に比べると医療機関の数が人口10万人当たりの一般病院数7・5で県内平均4・9や国平均5・9と多いことも特徴。津市が国保から給付した医療費(自己負担分を除く)は平成23年度で約186億1400万円から平成27年度の約200億5800万円まで膨らんでいる。一人当たりに換算すると、約26万4000円から約32万6000円まで上昇。これらの要因が重なり、平成27年度は補正予算で、約15億円以上と過去最大の法定外繰り入れを行うこととなった。それで、今年度の保険料値上げに踏み切らざるを得ない状況になった。
ここに至るまで津市も、努力をしてこなかった訳ではない。滞納者に対する納付指導や、それに応じない者への差し押さえといった毅然とした対応を交えながら、現年度の保険料収納率は90%以上に改善。更に、ジェネリック医薬品の普及促進などで医療費支出の抑制に努めてはきた。それでも全国を取り巻く社会構造の大きな変化には抗いきれていないのが実情だ。
今年度は激変緩和措置として、初めて当初予算に約1億8000万円の法定外繰り入れを盛り込んだが前述の通り保険料が21%もの値上げとなっている。市が提示するモデルケースを紹介すると、4人世帯で総所得200万円(40歳~65歳未満が支払う介護保険分あり)の場合、年間保険料が従来の料率だと40万5200円のところ、49万4600円にまで跳ね上がってしまう。低所得者層が加入者の大部分を占める中での大幅値上げは、収納率の低下を招く可能性もある。
国保は健康保険組合や協会けんぽに加入するサラリーマンでも、定年退職後の65歳以上になると加入するケースが多い。言い換えれば、全市民が対象となる保険制度という見方もできるため、保険料を抑えるために法定外繰り入れをもっと積極的に行うべきという声も根強い。一方、法定外繰り入れの原資が市税である以上、他の保険制度利用者から〝二重取り〟の不公平が生じてしまうのも事実。
津市は今回の値上げで、広域化する平成30年度まで再度値上げをしなくても済むという試算をしているが、広域化後も保険料の一律化はされず、現状の業務の大部分を引き継ぐこととなる。国の制度改革の効果を見つつ、これ以上、加入者負担を増やさないよう、地方の立場で声を上げていくことも重要となろう。