講演する荒木康行社長

講演する荒木康行社長

昭和47年に行われた三重大学初の公開講座の受講者有志が中心となって翌年の昭和48年に設立され、毎月の学習会で、より良い都市環境の創造に向けた研究を行っている都市環境ゼミナール=伊藤達雄会長=は16日に開いた平成28年度総会で、㈱百五経済研究所代表取締役社長の荒木康行氏を招き記念講演を行った。演題は「伊勢志摩サミット、地域の取り組みと期待」。
はじめに、日本でのサミット開催と地域への経済効果について、2000年の九州・沖縄サミットでは事前の試算で約440億円、名護市の宿泊者数は2000年から2014年までに124万人と倍増したこと、また、2008年の北海道洞爺湖サミットでは、北海道全体で観光客が約2倍になり、約437億円の経済波及効果があったとし、伊勢志摩サミットの場合、昨年6月5日に誘致が発表されて以降、一気に認知度が高まったことから、開催を機に三重県をアピールできるを千載一遇のチャンス、と期待感を示した。
また、同経済研究所の行ったアンケートでは、サミット開催決定による影響に関して、開催地の南勢地域ではプラスの影響があると答えた企業が45%と高いものの、県全体では24%に止まっていると分析。また、交通渋滞や過剰警備、テロの脅威などを懸念する声もあると指摘した。
一方、サミットに関連した会場関連施設や駅などの公共施設、高速道路などのインフラが急速に整えられたことから、開催後もこれらを有効に使うことの重要性を示した。
その上で、「サミット開催で大きく変わったのが県民、地域の意識」とし、「どうやって迎えて、開催後に施設などをどう生かして、どう有効に使うのか?知恵を絞って、次に何を打ってでるのかを考える、という素晴らしい意識改革になった」と話した。
さらに記念商品として開発した、伊勢志摩地域が生産量日本一を誇るアオサ、アラメなど7種の海藻を使った「志摩あられ」が、志摩市周辺のホテルなどで既に2万箱以上売り上げた事実に触れ、「通常はこの手の商品は5千個売れれば成功だが、この商品は海女が休憩の時にあられを食べる習慣があることにヒントを得たのが良かった。こうやって、商品にストーリー性を持たせることが大事」とした。
続いてインバウンドへの交通機関や商工会議所、観光協会の対応なども紹介した後、サミット開催後(ポストサミット)の三重県の経済波及効果として、5年間で1110億円、その内、外国人観光客数増加による効果は185億円、国際会議の開催増加による効果は37億円にのぼると試算。
その上で「三重県への外国人宿泊客は年間38万人と全国で23位だが、伸び率は全国4位。まだ伸びしろはある」とし、インバウンドの急速な増加が見込まれることから、「今後は、サムライやゲイシャなど外国での典型的な日本のイメージを意識し、日本の歴史文化などに興味のある欧米の個人旅行客と、ショッピングと温泉に関心のあるアジアからの団体観光客、さらに日本人観光客など、様々な観光客に対し、規模の小さい宿泊施設や規模の大きいホテルが、それぞれの持ち味を生かし、どの客層をターゲットにするのかを考えること重要」と締めた。