シューズボックスの片付けをしたら、ほとんど履いていない靴が何足か出てきた。近頃ハイヒールを履いていない。痛くはないけれど、疲れるから履きたくない。楽が一番のこの頃なのだ。
そういう私なので、ロンドンの受付業務の会社に採用され、会計事務所で働く女性が、ハイヒールを履いていないことを理由に無給で帰宅を命じられたというニュースに驚いた。ヒールが原因で給料をもらえないとは。
服装規定が必要な職場はあるだろう。しかし、五センチから十センチのハイヒールという規定は行き過ぎだ。きちんとした形の靴なら三センチでも変わりないはず。ハイヒールで一日仕事をする大変さを、規定を作った人は知らないに違いない。
窮屈な靴から連想されるのは、中国のてん足である。幼児期から足に布を巻いて変形させ、小さな足を美しいとした。ヨーロッパでもバレエの流行で小さな足が貴族階級の証であったという。女の足は観賞用で、歩いたり踏ん張ったりするものではないという認識だ。
歩きやすい靴で男は闊歩し、女は不安定な靴でよろけて誰かに支えられる。そんな昔ならともかく、男と同等の仕事を求められる現代の職場にハイヒールはそぐわない。女性差別だと声高に言うつもりもないが、疲れる靴は誰でも嫌だよねと、社会の理解を求めたいところだ。    (舞)