津市社会福祉協議会が保管・管理している『地域福祉資金』は合併以前の旧10市町村の各社会福祉協議会の基金を原資としており、福祉活動への助成に使われている。しかし、合併から10年を迎えた今でも旧10市町村別に資金が分割されており、積立額の多い少ないで地域毎の助成額に差が出ている。社協の合併協議の中、この資金も合併後3年で一本化が目標とされていたが未だ至っていないのが実情だ。

 

 

プリント 「地域福祉資金」とは、平成18年に旧10市町村の社会福祉協議会が合併した際に、各市町村にあった社協が保持していた基金から、それぞれ2億円と職員の退職金といった必要経費を拠出した上で、残りを積み立てたもの。
この基金の原資は国が昭和63年に行ったふるさと創生事業の交付金や、行政からの補助金、それぞれが集めた寄付金など。合併時の取り決めにより、追加の積み立ては一切せず、無くなるまで取り崩していく形となっている。合併当初で計約13億5千万円の資金があり、年間平均4~5千万円が取り崩され、平成27年度末で約8億7千万円が残っている。
この資金について、津市社協はあくまで保管・管理を行っているだけというスタンスに終始しており、同社協の財産として計上されているものの、実質的な決裁権を持っていない。取り崩しに関しては、旧市町村におかれた同社協の各支部地域におかれている津市地域福祉資金運営員会が地域の実情に沿った事業計画を作成。それに基づき年間の取り崩し額を決めている。
元々、この資金は合併協議で各社協の代表者たちが、合併後3年で一本化するという目標を立てたが、現在も一本化されず、旧市町村単位ごとに分割管理されている。その残高には大きな差があり、同じ津市内で同じような福祉事業を行っているにも関わらず、資金の残高差による財政的な背景で助成額に差が出ることにも繋がっている。
一本化できない最大の原因は地域福祉資金の原資となっている旧市町村が保持していた基金の性質。旧津市社協と比較すると、ほかの旧市町村の社協では、旧町村の地域住民や自治会に積極的に協力を呼びかけて会費や寄付などを集めていたこともあり、基金は地域の人々から預かったものであるという意識が強いからだ。
また、各地域で資金を使った助成事業についても、津市社協は助言は行うものの最終的な決定権は、運営委員会にあるため、久居は平成25年度までに基金を全て地域内の地区社協で分配しており、積立の残高は0となっている。これも一本化の議論を行う際に、どう考えていくかが課題となろう。
ただ、残りの地域で比較しても、津地域の約6億円から河芸の約951万円まで残高に大きな差がある以上、人口比を加味した上でも枯渇までの年月に大きな差が出てくることは明白。津市社協は資金が枯渇した場合に備え、資金から助成を受けている各地域の地区社協に、地域住民からの会費など自主財源を確保するよう呼びかけているが、旧市町村時代に積み立てた基金の多い少ないで、向こう何十年に亘って地域福祉の平等性に影響を与え兼ねないのは無視できない問題だ。それは、そもそも社協合併の意義さえも、否定することに繋がりかねない。
もちろん、一本化できなかった経緯からも、各地域で資金を大切に扱ってきたことは理解できるが、合併協議の中で見出した資金の在るべき姿から逸脱をしているのも事実である。
これまでの経緯を含め、一足飛びな一本化は難しいと思われるが、合併から10年を迎えた今だからこそ、津市全体の地域福祉の未来を見据えた上で、改めて建設的な議論を交わす時に来ているのではないだろうか。