家の中での急激な温度差が身体に様々な悪影響を及ぼす『ヒートショック』が急増するこの季節。特に高齢者が入浴する時に発生することが多く、夏期と冬期の寒暖差が激しく住宅の断熱化が余り進んでいない三重県は全国的に見てもヒートショックのリスクが高いという調査結果も出ている。高齢化社会の進行と共に問題は深刻化していくとみられるだけに、家庭での心がけや住宅の断熱化など然るべき対策が重要となる。

 

 

消費者庁が今年1月に発表した冬場の高齢者の入浴事故に対する注意を呼びかける文書によると、家庭の浴槽で溺死した人の数は、平成26年で4866人。平成16年と比べると、7割増加しており、うち高齢者が9割を占めている。更に厚生労働省の調査によると入浴中の事故死者数は年間約1万9000人と、同年の交通事故死者数4113人を大きく上回る実情が浮き彫りになっている。
冬期に入浴する際に、暖かいリビングから、冷えた脱衣所や浴室に移動。そこから急に熱い湯につかることで血圧が乱高下をおこし脳・心臓・呼吸器の疾患に繋がる。老化によって血管がもろくなっている高齢者はそれが顕著となる。
こと三重県に目を移すとどうだろうか。北海道大学の羽山弘文教授が都道府県別に心疾患による死亡・脳血管疾患による死亡・呼吸器疾患による死亡・不慮の溺水などの発生と、外気温の密接性を調査した結果によると、脳疾患死が三重県は全国2位。呼吸器疾患でも8位に入っている。そのほか、九州・四国地方の県の順位が高く、逆に北海道や青森県といった東北地方などの寒冷地や沖縄県は軒並み低くなっている。
これには、夏と冬の気温差が大きく影響しており、比較的温暖な地域ほど、冬季の死亡者が増える傾向にある。年中温暖な沖縄県は例外と言えるが、北海道や東北地方にある県の死亡率が低いのは住宅がしっかりと断熱化されていることが理由といえる。三重県では少し古い住宅となると、充分な断熱が施されていない家が多く高齢者の暮らす住宅となれば顕著。それが死亡率の高さに繋がっているとみられる。
簡単な対策をするだけである程度、死亡事故を減らせる可能性も高く、前述の消費者庁の文書にも5つの対策が記されている。①入浴前に脱衣所と浴室を温める(浴槽に湯を入れる時にシャワーを使うと蒸気で浴室が温まる)②湯の温度は41度以下、浸かる時間は10分が目安③浴槽から急に立ち上がらない④アルコールが抜けるまで、食後すぐの入浴は控える⑤入浴前に同居者に一声かけてもらう。その他にも入浴前に水を飲むこと、掛け湯を必ずする(手足など心臓から遠い部分からかける)こと、持病が無い元気な人でもリスクがあることなども重要な注意点といえる。
国も看過できない問題として、高い断熱性を備え、高齢者・障害者・子育て世代も安心して暮らせる断熱性を含む高性能住宅の普及をめざす「スマートウェルネス住宅事業」を進めている。県内では、建材業者や建設業者による「みえ健康・省エネ住宅推進協議会」が事業を受託し、断熱改修前後の状態調査や、普及活動に努めている。そこから発展する形で、建築業界や県や三重大などを巻き込んだ産官学連携による三重県型の健康住宅を模索するために「みえ健康住宅産業フォーラム」を立ち上げて議論を推進中。住宅の断熱改修を行う場合には、断熱前後の身体の状態などの調査に協力するなどの条件と施工業者に限りはあるが、限度額120万円の補助が受けられるスマートウェルネス事業や、条件を満たすエコリフォームをすると限度額30万円の補助が受けられる住宅ストック循環支援事業といった補助金もあるので活用するのも良いだろう。
津市消防本部管内で昨年12月から今年3月にかけて発生した浴室の急病事案は全76件。内69件が高齢者で心疾患・脳疾患・呼吸器系疾患がそれぞれ3件。その他の原因でも38件中、21名が意識消失という結果となっている。これら全てヒートショックによるものではないが、無視できない数字であることは間違いない。
これから高齢化社会の進行に伴い、この問題はますます深刻化していくことは間違いない。市民一人一人が自分の命は自分で守れるよう心掛けて対策をすることが重要であるといえる。