全国の自治体間で〝返礼品合戦〟が過熱する「ふるさと納税制度」だが、その影響で津市は平成28年度(昨年1月~12月算定)で約1億2000万円の市税が市外へ流出している。この状況を受け、津市も今年『ふるさと津かがやき寄附』の市外在住者に対する返礼品を強化し、一定の成果が出ているものの、予断を許さない状況が続いている。

 

ふるさと納税制度は昨年度より、控除額の倍増や確定申告を省略するワンストップ制の導入により飛躍的に利用が増えている。それに伴い、新たな財源を得ようとする自治体間の〝返礼品合戦〟も過熱化。インターネット上の様々なサイトでは全国の自治体の返礼品が、まとめられており通販感覚で寄附先を選ぶことができるようになっている。
それによって、東京23区では、約129億円の税収が流出するなど甚大な影響を受けている。ただ地方の育んだ人材が流入している都市部から、地方へ財源を還元するという流れ自体は制度の想定の範囲内ともいえる。だが、問題は地方と地方の競合にまで広がっているということだ。
津市は元々、ふるさと納税制度「津かがやき寄附」の使途項目に市民から要望のあった津城跡の整備を追加し、そこへの寄附を全て基金として積み立て保管するなど、自治体を応援するという本来の趣旨に即した運用を続けていた。ちなみに「津城復元の会」が募金活動を行ったり、制度の利用を呼び掛けるなど地道な努力を継続している成果もあり、今年10月末現在で制度全体の寄附総額4847万円の内、同使途項目だけで1735万円2000円が集まっている。
しかし、制度の利用が活発化した影響を受けた平成28年度(昨年1月~12月で算定)は市税約1億2000万円が流出している。これに関しては地方交付税の算定で、減額分の75%が補填される見込みとはいえ、財源の流出が続くことは、看過できる事態ではない。津市は、これまでは〝返礼品合戦〟に参加することは避け、返礼品は手数料に当たる2000円分の特産品に限ってきたが、自己防衛策を取らざるを得なくなったのが実情だ。
そこで今年8月1日より同制度を通じて3万円以上の寄附をした市外在住者に津市の精肉店「朝日屋」のすき焼き用の松阪肉1㎏を贈っている。その成果もあり、今年10月末現在の寄附249件の内166件が松阪肉を希望。昨年度の寄附額659万7000円に対して、今年は同日時点で685万2000円と既に上回っている。
津市はこれからも、新たな財源を得るための返礼品を充実すべく、様々な声を参考しながら検討を続けている。市議からも、津市の魅力を伝える体験型の返礼品の新設を求める提案なども寄せられている。
県内でも制度を活用し、地域の特産品を返礼品とすることで財源を得ている自治体もある。全国に目を広げれば、制度を通じて特産品が流通することで、地元業者らの収益が上がり、地域活性化や知名度向上に繋がっている自治体もあることも事実だ。
津市は県内でも人口規模が大きく、制度による財源流出の影響が顕著であることから、更なる財源確保に向けた取組みが必要なことは間違いない。ただその一方で過度な返礼品を贈っていては、財源が先細りするだけに成りかねない。
国も過熱する現状に歯止めをかけるべく、制度に規制を加える可能性はあるものの、その時期や、それがどこまで及ぶのかも見当がつかない状態。津市では来年度の算定基準となる今年の1月~12月の市税の状況を考慮した上で、新たな取組みの内容を考えるとしているが、非常に難しい立ち回りを求められているといえよう。
すっかり身近な存在となり、利用する人も増えたふるさと納税制度だが、その裏では制度の歪みが早くも出始めている。応援したい自治体に寄附をするという本来のスタンスにもう一度、立ち返りどのような制度にしていくかを考えるべきなのかもしれない。