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教育改革のことを、何人かの子どもたちの実際の姿を見ながらずっと考えています。
今の私の周辺にいる子どもたちは、それぞれが異なる教育環境にあり、どの子どもにも未来への可能性と現状の課題が見えています。そういう子どもたちを、私は教員時代にもまして切実に、その子の将来のことを思うようになっています。私に姿を見せてくれる子どもたちは、日本全体からすればは氷山の一角にも足りないことは承知しています。ただし、報道される事件や事象を含めると、やはりそこには世代としての共通性があるのは確かなようです。私の周辺の子どもの具体例は、個人情報になるのでここに書きませんし、個人で努力している教職員も確かにいますが、今の学校は、組織としても、機能としても、子ども一人ひとりを真に大切にできる状況にはないように感じざるを得ません。
私は元教員なので、子どもたちから聞かされる「先生」や「学校」の話は、その裏側が透けて見えてしまうことも少なくありません。学校というものが、子どもや保護者の方をどのように扱うかは、それほど進歩もなく、ほとんど昔からのやり方で適当にその場しのぎをやっているとしか見えません。個人にしろ組織にしろ、本音がどこにあるのか、子どもたちへの宿題の出し方やノートなどの点検の仕方、学校からのお便りなどを見ていると、最近流行の表現をすれば、まさに「学校ファースト」「先生ファースト」の類であると思われます。そういうものをうまく「活用」したり「補足」したりできるのは、よほど聡明な保護者の方か、同業者、つまり「先生」がご家族にいる家庭でしょう。
さて、三度目の機会をいただいてこの文面を書くにあたり、あらためて、現在の私が関心を持つキーワードで教育改革の現状を調べてみました。
その中で特に目に留まったものは、これからの日本の少子高齢化の予想です。国土交通省の「わが国の総人口の長期的推移」という資料を見ると、なんと二一〇〇年には、日本の人口は今の半数となり、そのうちの「約三人に一人が高齢者」と示されています。今日生まれた赤ちゃんが八〇歳を過ぎた頃には、日本は大正時代と同じ人口になり、しかも大正時代にはその大半が五〇歳以下であったのです。八〇年余りも先のことではピンと来ない人もいるかも知れません。二〇五〇年には戦後直後と同じ人口になり、一九五〇年から高度経済成長を担った働き盛りは、既に半減しています。今年小学校を卒業する子どもたちが成人する二〇二五年頃には、四分の一が高齢者です。ちなみに坂本龍馬が活躍した幕末の人口は、千二百万人余りで、今の一〇分の一です。
次に目に留まったものは、アクティブ・ラーニングの例として、五五歳から亡くなるまで日本中を歩き回ってほぼ正確な日本地図を作った伊能忠敬とその弟子たちの業績を紹介している文面でした(小菅将太EducationTomorrow編集長)。私もアクティブ・ラーニングの例は日本国内にあると考え、県内の谷川士清、松浦武四郎、柳樽悦、近藤真琴といった先駆者たちや幕末に活躍した有名人の坂本龍馬などが、どのように学び、そこで身に着けた学力を実際にどのように人生に活用したかを見直していたところでした。小菅氏は、日本全体の地図としてまとめる段階に焦点をあてていて、確かに伊能忠敬とそのグループの業績は、アクティブ・ラーニングの要素を備えています。私には私なりの考えがあり、伊能忠敬たちがそのようなことをする意欲やできる学力をどのように身に着けたのか、というところに関心を寄せています。当時の教育機関で言えば、藩校や寺子屋、私塾などです。
インターネットの検索では、ほかに、各大学の教育改革の方針や、大手学習塾の教育改革への対応、教育改革そのものに対する評論が以前よりも断然増えていますので、ご興味ある方はどうぞご覧ください。私がこの紙面で以前に書いたことと同じことを言っている研究もあります。今の私には、どうも子どもたちが直面している問題とかけ離れた理想論や、立場を守るための詭弁や、無責任な論考が多いように思われてしまいましたが。
だから今どうすればいい。この答えを具体的に見つけなければ、日本の近未来を背負う子どもたちに、高齢者を背負う気力も体力も育てられないと、と書いた瞬間に、私もその一人ですが、高齢者が甘えてよいのか、もっと自分自身のこととしてこれからの日本の在り方を考え、動かなければいけなければならないのではないかと思いました。年齢とは関係なく、坂本龍馬になろう。
坂本龍馬は、姉が基礎学力を付け、千葉道場で師範になり、勝海舟の塾に通い、海軍伝習所で学んだことは有名です。龍馬は「この国の未来ファースト」でした。その目的が貿易であったにせよ、龍馬の対話と協働を軸とした猛烈な活動が、生きた学力を誘発して日本の新時代を開きました。陰にはたくさんの龍馬がいたはずです。(伊東教育研究所)
2017年2月9日 AM 4:56