特定外来生物の「アライグマ」が津市内でも急激に生息域を広げている。農業被害だけでなく、住宅侵入など、これまでと違った形での獣害が頻発。繁殖力が旺盛で人里での生活にも適応するため、市街地にも出没しており、津市が貸し出しを行なっている捕獲用の罠の稼働率も高くなっている。被害範囲が農家だけでなく一般家庭にも及ぶことから市民全体で、この厄介な隣人とどう向き合うかが課題となっている。

 

捕獲されたアライグマ(読者提供)

捕獲されたアライグマ(読者提供)

北米原産のアライグマはペット用として1970代に大量輸入された。しかし愛らしい見た目とは裏腹に成獣になると気性が荒くなることが多く、手に負えなくなった飼い主が次々と飼育放棄。雑食性で果物から動物まであまり食べるものを選ばず、成獣なら毎年3〜4頭を出産可能で天敵もいないため、自然環境に放たれたそれらの個体が徐々に繁殖しながら生息域を広げ続けた結果、近年では全国各地で様々な問題を引き起こしている。特定外来生物の指定もいち早く受けており、許可なく飼育・繁殖を行なったり、放逐すると重い罰則が科せられる。
津市でアライグマの問題が初めて浮上し始めたのは平成24年頃。香良洲地区のナシ園が被害を受けたことを皮切りに、近隣の久居などでも被害が続出した。当初は農作物を荒らされた農家からの被害がほとんどだったが、ここ最近は状況が一変。江戸橋など住宅密集地にまで生息域を広げ、ねぐらにするために住居の屋根裏や軒下に侵入するという生活被害が増えている。侵入の際に壁などを破壊されるばかりか、糞尿で天井が腐ることもあり、京都でも貴重な歴史的建築物が被害にあっている。
津市も平成27年にアライグマの防除実施計画を策定し、被害農家や一般家庭に小型捕獲檻の無料貸し出しを行なっているが、52基がフル稼働状態。それに伴い、駆除頭数も飛躍的に伸びており平成27年4月〜12月で15頭に対して平成28年の同月間で67頭にまで膨れ上がった。
実際にアライグマを捕獲したわな免許保持者の話では、ねぐらさえ特定できれば初めてでも比較的簡単に捕獲できるという。だが、様々な病原菌を媒介している可能性があるのでを捕獲した場合は、津市に引き取ってもらうことを勧めていた。有料だが専門業者も駆除してくれる。
ただ、それでも駆除が全く追いついていないと見られ、環境省のシミュレーションによると100匹のアライグマを全く捕獲しなかった場合、生息数は6年後に5倍、10年後に50倍という結果が示されている。加えて、生息数の50%以上を捕獲しない限り、増え続けるという結果も示されている。また近年、飛躍的に増加を続ける空き家が格好のねぐらになることも駆除の課題になるだろう。
同じ獣害でもシカ、イノシシ、サルは在来種で適正な個体数に戻すことが重要だが、アライグマは外来生物。環境省も完全な駆除を最終目標に掲げている。生態系保護の観点からの対策や危機意識の共有も必須だ。最善のアライグマ対策は地域への侵入を防ぐこと。もし、自分の近所で見かけた場合にはねぐらの特定と素早い駆除が重要となる。繁殖期を迎える4〜6月に侵入被害が増加するため、自宅の侵入されそうな隙間をふさぐといった対策を行うと同時に、屋根裏から聞きなれない音がするなど異変に気付いた場合は然るべき対応をすべきだろう。被害の相談は津市農林政策課獣害対策担当☎059・229・3238へ。

 

見事なしだれ梅

見事なしだれ梅

津市藤方の結城神社で今年も「しだれ梅まつり」が開かれている。
南朝の忠臣・結城宗広公を祀る同神社は紅白のしだれ梅約300本が咲き乱れる東海地方屈指の梅の名所。見頃は今月下旬から来月上旬にかけてとみられる。
また、同神社は宗教・宗派の壁を越えた霊場めぐり『伊勢の津の七福神』の福禄寿霊場でもあり、3月3日11時からは七福神の他の6寺社(四天王寺・津観音・円光寺・初馬寺・高山神社・榊原地蔵寺)と、「観梅祈願祭」を開催。本殿で7寺社の代表者たちが無病息災・五穀豊穣・必勝祈願・商売繁盛・技芸上達・延命長寿・子孫繁栄を祈願し梅園内を練り歩く。
土日には家運繁栄と健康を祈願する梅花祭などの催しも開催。梅園の拝観料は大人500円、小人(小中学生)200円。混雑が予想されるので、できる限り公共の交通機関の利用を。しだれ梅まつり開催中の開苑時間9時~17時。期間は3月下旬迄。問い合わせは☎津228・4806。

講演する本紙・西田会長

講演する本紙・西田会長

消費税の周知活動やe─Taxの普及推進といった税務行政に協力する「津間税会」=津市南丸之内、川喜田久会長=の研修講演会が8日、津センターパレスで開かれた。
この研修会では毎年、各方面で活躍する人々を講師として迎え、様々なことを学んでいる。今回の講師は津城復元の会会長である本紙・西田久光会長。演題は「再評価進む高虎公の城づくり」。
西田会長は津藩祖・藤堂高虎について、徳川家康と共に江戸幕府を作り上げ、太平の世をつくりあげた立役者でありながら、後にそれを打倒した明治政府による喧伝の悪影響で近年に至るまで正当な評価が受けられなかったことを説明。しかし最近、奈良県の世界遺産・春日大社では数多の人物が寄進した釣燈籠の中でも高虎のものと5代将軍・徳川綱吉のものだけに説明板が添えられたことからも「世の中は大分変ってきた」と好転の兆しを指摘した。それを裏付ける出来事として昨年12月に神奈川県横浜市であった「お城EXPO」で津城ブースは大人気だったことや、近畿日本ツーリストのグループ企業の旅行会社「クラブツーリズム」独自の「日本百名城」に津城が選ばれたことをきっかけに全国の旅行者が訪れ、好評を博していることなどを紹介した。
そういった再評価の大きな契機として、国内の城郭研究の権威である広島大学大学院の三浦正幸教授が高虎を「日本一の築城の名手」と高く評価したことを挙げ、高虎が近世城郭の基本となった層塔型天守閣を生み出したことや徳川の大坂城や伊賀上野城の30mにも及ぶ高石垣、鉄砲が届かないほど広い水堀で城を囲み、敷地を最大限に活かす方形の本丸敷地は、平和な時代に政庁として使い易いことなどを説明。同じく城づくりの名手と言われている加藤清正を凌ぐ高い技術力と未来を見据えた設計思想の素晴らしさを語った。
その上で、高虎について徳川幕府編纂の正史「徳川実紀」にも、徳川家康の思いに叶う唯一の人物で二代将軍・秀忠からも絶大な信頼を寄せられただけでなく政治の議論をする中で必要な際にははばからず諌めたという内容の記述があることを根拠に、「風見鶏」や「ごますり」と言われてきた後世の批判を一蹴。更に日光東照宮にある家康・秀忠に仕えた重臣たちの墓碑でも前列筆頭に配されていることなどを紹介し、徳川幕府草創期に高虎がどれだけ重要な役割を果たしたかを解説した。また、京都の南禅寺の山門は高虎が大坂夏の陣で戦死した家臣を弔うために寄進したものであることを話すと、聴講者から驚きの声も上がった。
最後に津城復元の会が津市のふるさと納税制度を活用し、1月末までに約1万2000人から約1871万円の津城復元資金を集めたことを報告。「2007年に見つかった津城図面を基に地元の木を使って地元の職人の手で復元したい」と目標を語り、協力を呼びかけていた。

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