2017年2月

ゆとり教育についてです。今さら何だと思われる方もいらっしゃるかも知れません。けれど、年齢的には、現在、だいたい十四歳から三十歳になる人たちが、その政策に基づいて学校で学びました。社会人としては既に十年ほどの経験者になっています。一方では、この春に中学三年になる生徒たちは、まだ、ゆとり教育の世代ということになります。ということは、ゆとり教育による影響は、まだまだこれからも続くということです。
ゆとり教育で学校で学んだ子どもたちや保護者を苦しめているのは、「学力低下」というレッテルを貼られて、その「埋め合わせ」を高校受験や大学受験、就職試験のために、あたかもそれが「親切」でもあるかのように、押し付けられるということです。
この数年の中学生や高校生の購入させられるワークブックや参考書などの教材の量は、見ただけでことばを失うほどの量です。身近にそういう生徒がいない方は想像してみてください。一つの教科だけで、小学生のランドセルがいっぱいになるぐらいあるのです。それを購入させられる保護者の経済的な負担、それをこなそうとする教師のストレス、何より、それを課題として毎日させられる子どもたちの人間性を破壊してしまう危険の高い苦役。
そこへ、「学力の補てん」としての学習塾が、金銭と時間と労力を必要とします。過去の話をしているのではありません。今の中学生や高校生とその保護者が、そのような「現実」を受けているのです。大学生やその保護者ですら、大学の学費以外に、大学が契約する就職に関する勉強会に参加させられ、金銭と時間を費やしています。
私が大学教員だった時、外部の講師が来て、教育心理や教育制度などを学生に教える半ば強制的な学習会があり、学生にまぎれて受けてみたことがあります。
教員採用試験の準備のための学習会では、要領よく簡潔に要点をまとめて、過不足なく講師が学生たちに教えていたので、これは役に立つ、と素直に思いました。ただし、同じような名前の授業が大学のカリキュラムにもあって、その専門の先生もちゃんといますし、その単位を取らなければ卒業できません。
大学が就職予備校になるのなら、その学習会の講師のような人を教員にして授業をすれば、学生は経済的にも時間的にももっと有意義な使い方ができるはずです。教育学士という専門家を養成するのが大学の目的であるならば、その学びの成果の一つが採用試験の対策になるのは、当然のことと思われます。
私立の大学では、かなり以前からそのような外部委託と大学教員による補習を充実させて、教員採用試験の合格者を多く出しているところがあります。その合格者の数に圧倒されて公立大学系でもそのような「対策」をするのも定着してきてしまいました。
もうお気づきの方もいらっしゃるかも知れません。ゆとり教育は、そのものが「失敗」なのではなく、そこに新しい教育成果を見る目が定着する前に、旧来の知識と技能を中心とした「学力」を持ち込んで「判定基準」にし、保護者や子どもたちを不安に追い込んだ人たちによって、見事に「食い物」にされたのです。責任は政策にもありました。ゆとり教育で社会人を育てるまでの一貫性を、制度上で保証しませんでした。
戦後の教育でもっとも悲惨な事態がこうして作られました。大変まずいことは、ゆとり教育の子どもたちや、それにかかわった教師や教育委員会の役人、教育学者などが、ゆとり教育を否定する側の「学力」での「勝ち組」となって、今の学校教育を進めているという事実です。旧来型の「学力」の低下を自己責任と思い込まされて、それを懸命に補った人たちが、新人や中堅やベテランの教師となって子どもたちの前に立っています。
だから学校や塾でやっていることが、自分たちがしてきたことと同じ、一つの教科だけでランドセルがいっぱいなるぐらいの、問題集や参考書の押し付けなのです。
そこへ、今度は制度からの抜本的な教育改革が始まりました。学校現場や教育委員会、学習塾や学習教材会社などから、改革を「骨抜き」にしようという抵抗が起こるのも無理はありません。そんな改革をされたら、自分たちの明日がなくなるからです。しかし、その方法で教育を「食い物」にしてきた人たちの明日よりも大切なものは他にあります。
このように書けば、聡明な方はお気づきいただけたと思います。この春に中学校を卒業する子どもたちは、ゆとり教育のおかげで、始まった教育改革で活躍できる力を持っているのです。多量のワークブックで苦しめられた中学時代が間違いで、のびのびとしていた小学校時代が正しかった、と意識転換をし、自分のやりたいことをとことん追究する。大学進学や就職を考えるなら、科学、芸術、スポーツなどで、客観的評価を受けるまで成果を出す。また、たくさん本を読んで自分の感性と思考力を磨き教養を身に着ける。
そのための、ゆとり、を持てる進路を選択する。そうやって、日本の未来のために自分の教育を創造できる時代になったのです。

(伊東教育研究所)

◆三重中勢地区外科医会100回記念シンポジウム 自分らしく地域に生きる~超高齢社会の医療・ケア・支え合い~ 2月26日㈰、津市桜橋2丁目の三重県医師会館で。同医師会、中勢地区外科医会の主催。後援は、津市、久居一志地区医師会。▼第1部…13時半~14時20分・対談「地域包括ケアの進む道」(新田國夫氏×町永俊雄氏)▼第2部…14時半~16時・パネルディスカッション「自分らしく地域に生きる」。参加無料。事前申込不要。同医師会☎059・228・3822。
◆みえの輝く女子フォーラム 3月1日㈬13時~16時(開場12時半)、津駅前のホテルグリーンパーク津6階伊勢・安濃の間で▼基調講演・13時10分~14時半…「やめられない!とまらない!~ダイバーシティ経営が企業を変える~」。講師はカルビー㈱代表取締役会長兼CEOの松本晃さん▼みえの輝く女子事例発表会・14時40分~15時15分…みえモデル受賞者の井上早織さん▼交流会・15時20分~16時。入場無料だが先着申し込み100名。申込みは所定の用紙に必要事項を書いてFAX059・224・3069で送信。締切りは22日㈬必着(但し、定員に達した場合は締切日までに終了する場合あり)☎059・224・2225。

阪美代子さんと、古布で丁寧に作られた雛人形など

阪美代子さんと、古布で丁寧に作られた雛人形など

オリンピックをテーマにした人形の展示

オリンピックをテーマにした人形の展示

津市安東町の古民家コミュニティー「ゆずり葉」ので3月5日まで、同市河芸町中別保の阪美代子さん(86)が「古布の雛展」を開いている。古布を使い手作りした雛人形やタペストリーなど約50点が並び、一部は販売されている。
阪さんはほかにも陶製の雛人形など様々な分野の作品づくりを経験。また人の世話をするのも好きで、民生委員を務めていたことから4年程前まで16年間、自宅に担当地区のお年寄りを招き、一緒に作品づくりを楽しむことで、参加者の交流や認知症防止に取り組んでいたそう。現在も高齢だが元気に作品制作に励み、娘達に作品を並べる手伝いをしてもらって各地で展示を行い、その売り上げのほぼ全額を社会福祉に寄付している。
「元気の秘訣は、あまりくよくよせんと、皆さんと接してお話することです。この作品展では、一つひとつ心を込めて作っているところを見てほしいです」と阪さん。
なお、ゆずり葉では同時期に、南河路の老人会「南睦会」の女性部有志12名による、五輪をテーマにした人形90体も

展示中。
それぞれ得手・不得手があるなかで助け合い、知恵を出し合って作った力作が並ぶ。問い合わせは、ゆずり葉☎津227・3523へ。開館10時~17時。月・金休館。

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