朝、布団から起き上がった途端、「うっ」と声が出た。胸が痛い。右胸だったから、心臓病でも恋の病でもないことはすぐに分かった。昨夜まで異常がなかったのに、いったいどうしたことだろう。
何本かのろっ骨の中ほどの一本の真ん中がおかしい。動かないときは何でもないが、胸に力が入ると痛い。指で押すと痛い。内臓ではなく、骨か腱か筋肉のようなものの痛みだと自己診断した。
きっと、どこかでぶつけたとか、ひねったとか、寝相が悪かったとかしたのだろう。病院へ行くほどでもないと、それも自己判断した。日常の仕事はこなせるつもり。
だが、痛みというのは、不自由なものである。掃除機を動かして「うっ」、洗濯籠を持ち上げて「うっ」、椅子に座るのも椅子から立ち上がるのも慎重になった。
それだけではない、この痛みは何か大きな病気の前触れではないかと心配になった。近頃、私の周囲で病気に倒れる人が多い。先週まで元気にいたのに入院手術と聞くと、他人事とは思えない。病気が私を避けていくといういつもの楽観が揺らぐ。
「ろっ骨をほんの少し痛めちゃって……」と言いながら、何でもないことにしてしまいたい自分がいる。五日経っても痛みが軽くならなければ、病院に行こう。不安が次の病気を引き起こすといけないから。  (舞)