2017年5月

津市美杉町三多気の国登録有形文化財「田中家住宅主屋」=田中稔さん(61)所有=がこのほど茅葺屋根の葺き替え時期を迎えたが、費用が約1千万円と高額にも関わらず、国の補助の対象外で工面に苦慮している。また田中さんは、同住宅を将来に亘り保存し、地域活性化のため活用する方法も検討中。同様の課題は市内のほかの登録有形文化財も抱える可能性があり、行政による保護施策の充実が求められている。

 

 

今月10日、美山町の茅葺職人が田中家の屋根の一部を修理する様子

今月10日、美山町の茅葺職人が田中家の屋根の一部を修理する様子

国登録有形文化財「田中家住宅主屋」と三多気の桜による豊かな山村景

国登録有形文化財「田中家住宅主屋」と三多気の桜による豊かな山村景

平成8年、文化財保護法の一部改正により誕生した「文化財登録制度」は、近年の生活様式の変化などにより消滅の危機にさらされている、多種多様で大量の文化財建造物を後世に幅広く継承することが目的。
重要なものを厳選し、許可制などの強い規制と手厚い保護を行う「指定制度」を補完する。保護措置は届出制と指導・助言など緩やかで、所有者が外観の変更や内装の改修をある程度自由にできるため、生きた文化財として保存されるのが特徴。
登録の基準は、原則として建設後50年を経過したもののうち、①国土の歴史的景観に寄与しているもの②造形の規範となっているもの③再現することが容易でないもの。
「田中家住宅主屋」は江戸後期の木造平屋建、入母屋造茅葺。国指定名勝で、さくら名所100選に選ばれた「三多気」の並木とともに豊かな山村景観を形成していることが高く評価され、基準の①を満たしているとして、平成22年9月10日に市内の民家としては初めて登録された。
現在、この家には田中さんの母・彌生さん(85)が一人で住んでおり、花見客
や、茅葺屋根と周囲の自然がつくる美しい風景を撮影しに来る写真家にも人気のスポットとなっている。
一方、このほど屋根の葺き替え時期を迎えて、1千万円という費用の工面や、将来に亘る保存・活用という大きな課題にも直面している。
昔はこの地域に茅葺の家が多かったため、地元の山に住民が共有する茅場があり、刈り取り作業も皆で行っていた。そして田中家では町内の職人に葺き替えを頼んでいたという。
しかし時代の変化でその風習もなくなり、約20年前に屋根全体を葺き替えた際は、7~800万円の費用
をかけ、茅葺の家が多数現存する「重要伝統的建造物保存地区」がある京都府南丹市美山町の職人に工事を依頼した。
その当時、田中さんは市の正規職員だったためローンを利用できたが、現在は定年退職し嘱託職員であるため今回の葺き替えではローンが組めない。
また登録有形文化財建造物の修理に関しては国の補助があるが、要綱で明文化はされていないものの総工事費が約2千万円以上・設計費200万円以上といった条件があり、個人宅での利用は極めて難しい。
そこで田中さんは、跡継ぎがいないこともあり、クラウドファンディングによって、今回の葺き替え工事を含め将来に亘って同住宅を保存し、活用する方法を検討中。保存のための資金を集め、地域活性化や田舎暮らしをしてみたいなどの目的で同住宅に滞在してもらうという構想がある。
田中さんは「住民が途絶えさせず昔からある桜と共存している家を、屋根を直すことに同じ方向性の思いがあり、夢を持つ人のフィールドにしてもらいたい」と話しており、実現が期待される。
市内には他に18件の登録有形文化財があり、特に所有者が個人の場合、保存や活用に同様の課題が生じ得る。人脈やノウハウなどがないと個人での解決は難しく、国が一定の文化的価値を認め、後世への継承を目的に登録されている以上、行政による補助などの保護施策の強化が必要だろう。

シエンプレ

シエンプレ

 ロス・モレーノス

ロス・モレーノス

伝説的ラテンバンド、南山大学軽音楽部「トリオ・モレーノ」の元メンバーが結成した2つのバンドによる津城復元応援ライブ「セイ アミーゴⅣ」が、6月20日13時半から津市の三重県総合文化センター小ホールで催される(開場13時)。
トリオ・モレーノは全国大学対抗バンド合戦で準優勝。大学卒業後36年ぶりに再結成して挑んだ「熱血オヤジバトル2003」でも準優勝・審査員特別賞を受賞している。リーダーとして活躍した津市の林敬天さん(ギター)はその後、同じ津市在住の藤堂千秋さん(キーボード)、森和広さん(パーカッション)とボーカルユニット「シエンプレ」を結成。
一方、名古屋市在住の村瀬晃さん(ギター)、岡崎市在住の川口達哉さん(ギター)と稲垣憲さん(レキントギター)の元メンバー3人は「ロス・モレーノス」を結成し、中京地区を中心に演奏活動し人気を博している。
第1部ではシエンプレ、第2部ではロス・モレーノスがそれぞれ得意のラテンの名曲を演奏。注目はライブの副題に「いつまでも歌っていたい『ベサメムーチョ』」とあるように『ベサメムーチョ』。オリジナルは作曲者コンスエロ・ベラスケスが少女時代、病床で死期を悟った友人の夫が、友人に「もっとキスして(ベサメ・ムーチョ)」と今生の別れのキスを求める姿を目の当たりにした体験をもとに書いたもの。このベサメムーチョの部分から後に熱いラブソングとして世界中でヒットした。シエンプレは「幼い少女のベサメムーチョ」と題してオリジナルを。そしてロス・モレーノスはお馴染みのラブソングとしての「ベサメムーチョ」を聴かせる趣向。
また今回、藤堂千秋さんがさだまさしの楽曲「いのちの理由(わけ)」をソロで歌うのも「ぜひ聴いてほしい」と林さん。
総合司会・古谷嘉久さん。前売り500円(電話予約して当日受付で精算可)。売り上げの一部は津城復元資金に寄付される。
問い合わせは林さんへ(☎059・227・5823)。

三重大学の持つ知識を一般と共有しようと各分野の専門家を招き隔月ペースで開いている津市・津市民文化祭実行委員会主催の三重大学シリーズ、第73回文化講演会?「発見塾」が5月27日(土)13時半~15時、津市役所隣りの津リージョンプラザ2階健康教室で開かれる。後援=同大学、本紙。
今回の講師は同大学大学院工学研究科の大井隆弘助教。演題は『大正昭和の住宅と私たちの暮らし~台所・浴室・便所にみる技術と変革~』。
日本の住宅は、大正期以降の生活改善や住宅改良の機運の高まりを受け、大きな変貌を遂げてきた。中でも、ガスレンジ、ボイラー、水栓といった設備機器が集中する水回り空間の変化は顕著で、設備それぞれの進歩はもちろん、都市インフラ整備の進展と直接結びつき、暮らしを漸次変化させてきた。
この講座では、大正・昭和初期を中心に、様々な設備に起こった技術革新のほか、家事労働の合理化など、住宅に関する意識の変化も押さえつつ、水回り空間全体がどのようにデザインを変化させていったのかを振り返える。
入場無料、事前申込み不要。直接会場へ。
問い合わせは事務局☎090・1236・1144辻本さん。

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