平成24年に制度開始した「放課後等デイサービス」は、障害のある小中高生が放課後や休日に通える施設。家庭や学校以外での居場所と自立支援の機能を持ち、ニーズが高い一方、施設によっては取り組みの内容が大きく違っている。そんな中、津市で昨年12月開設した「ほし」=木造町=と、「ソレイユキッズ津」=久居新町=は、発達障害児などを対象とした将来の社会参加に繋がる支援と、地域交流にも取り組んでいる。

 

「ほし」のグラウンドで走る子供と職員

「ほし」のグラウンドで走る子供と職員

「ソレイユキッズ津」の体操による運動療育

「ソレイユキッズ津」の体操による運動療育

「放課後等デイサービス」は児童福祉法に基づく制度で、市区町村が発行する受給者証を取得すると、1割負担で利用できる。
近年、診断基準の変化などで発達障害と認められる子供が増え、全国的に事業所も急増。津市でも受給者証発行数は25年度の218件から増え続け、28年度は466件だった。事業所数は4月1日現在で27カ所。職員の確保など、運営面の課題もあり、預りを行うのみのところから、独自の自立支援を行うところまで、そのあり方は様々だ。
特定非営利活動法人ホワイトライフ=理事長・後藤宙史さん(47)=が運営する「ほし」は、その中でも特色のある独自の取り組みを行っている施設。同法人が障害者雇用推進を目的に開業した、福祉・介護の小規模事業所の一つ。
発達障害などの障害のある小学生~高校生を対象に将来の一般就労を見据えて療育を行い、社会性を育んでいる。施設は広い室内や芝のグラウンドが特長。子供達はここで伸び伸びと体を動かしたり、子供同士や職員と関わる中でコミュニケーションや集団行動のルールを自然に学んでいる。
後藤さんは、今後、①就労移行支援事業②障害者を雇用し派遣などを行う株式会社③働いている障害者が一般の住宅で一人暮らしを始める前に、準備として3年ほど入所できるグループホーム、の3つを新たに開業予定。同法人の既存の小規模事業所と合わせ、障害児を将来にわたり多面から支援する体制を築く。
後藤さんは自身の子供も障害があり、「障害児の就労を支援するだけでなく、社会に出て行ける仕組みづくりが必要で、そこにこだわりたい。『自分は納税者なんだ』というプライドを持ち、社会生活を全うして頂ければ」と話している。
一方、「ソレイユキッズ津」=運営・医療法人社団それいゆ=は、管理者・保育士の天花寺陽子さん(49)によると、三重県で唯一の、体操による運動療育を行う放課後デイ。
子供の身体能力向上と、運動で脳を刺激し、発達障害の衝動性や社会性などを改善することを目指し、200㎡以上の広いスペースで、長さ9mのエアートランポリンなどを使った体操を指導している。
また発達障害の一つ「発達性協調運動障害」の場合、身体機能に問題がないにも関わらず、脳がうまく機能しないために、例えば前転の際の「両手をマットにつく」などの簡単な動作ができない。発達障害は社会性の障害と認知されることが多いが、当事者にとっては、この運動におけるハンデは大きな困り事になり得る。
そこで同施設は、自然に動作が身につくよう、子供の特性に合わせサポート。運動を楽しみ、達成感を味わってもらうことを大切にしており、数カ月前から通っている子が、積極的に体操に取り組むようになるなど、成果が出始めている。
天花寺さんは「児童が自己肯定感が持てて、社会性を身に付けることができれば。将来、就職し社会の役に立ち、幸せになってもらいたい。そのための支援を行っています。今後、体操療育を三重県で広めたい」と話した。
発達障害を持つ子供は100人に数人いると言われており、支援は社会全体で取り組むべき大きな課題となっている。そのため両施設では、質の高い療育を行うだけでなく、地元住民と積極的に交流し、発達障害への理解を広めている。
障害児が社会に出て活躍するためには、当事者が必要な能力を身に付けるだけでなく、社会も受け入れるための知識を身に付けたり、体制を整える必要がある。
〝あるべき社会〟をめざす上で、両施設の取組みは非常に有意義であり、今後の展望も期待される。

「第12回一洋会作品展(油彩・水彩)」が6月7日(水)~11日(日)の9時半~17時(最終日は16時まで)、「有形文化財・油正ホール」=津市久居本町1583=で開かれる。
「洋画を描くことが好き」という共通点で集まって結成し、津市一志町を中心に活動している同グループの12回目の作品展。メンバーは30代~80代の10名で、今回の出展者、植地珠子・岸川昭宏・篠木信子・清水正人・竹内義夫・田端忠勝・橋本苗彦・長谷川實・松尾悦子・松尾和男(50音順、敬称略)が約50点の作品を展示する。
問い合わせは☎059・293・0175へ。

大正昭和の茶陶に大きな変革をもたらした川喜田半泥子の創作の舞台であった津市郊外の千歳山荘。
山荘の建築や障屏画をはじめ、半泥子が千歳山で体現した美の世界を紹介する「よみがえる半泥子の千歳山荘展」が6月13日(火)~7月2日(日)9時~17時、三重県総合博物館交流展示室で開かれる(19日・26日は休館)。主催=津文化協会、半泥子と千歳山の文化遺産を継承する会、共催=同博物館・三重大、後援=津市・津市教委・石水博物館・(一社)三重県建築士会。
関連イベントは──
▼17日13時40分~14時10分(受付は13時~)・ミニレクチャー=講師は、三重大学の菅原洋一教授。演題は「半泥子と千歳山荘」。
▼17日14時10分~15時40分・藤森照信氏の講演会「茶の建築・半泥子の建築」=建築史家・建築家で数々の茶の建築を観察し、設計している同氏(江戸東京博物館館長)が、半泥子が茶を楽しみ、遊ぶ、作陶に打ち込んだ千歳山の山荘に寄せて、茶の建築の魅力について語る。
共に会場は、三重県総合文化センター内の三重県生涯学習センター2階視聴覚室。入場整理券が必要(17日当日10時から、同展示会受付(三重県総合博物館交流展示室)で先着順に無料配布。
問い合わせは半泥子と千歳山の文化遺産を継承する会☎090・1236・1144へ辻本さん。

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