終点付近にある水上マーケット

終点付近にある水上マーケット

 

8月31日13時半頃に国道163号の終点から出発。ただ少々寂しいのはここが終点と誰もが一目で分かるようなランドマークがないこと。全国の国道ファンの間では〝おにぎり〝と呼ばれ、親しまれている国道の道路標識もかすれ、歩道に三重県の距離票(道路のしてん起点からの距離を記してある)が打ち込まれているのみ。道路の起終点を示す道路元標設置義務はもうないが、小さなものでも良いので終点を示すモニュメントがあれば、この道に興味持つ人が増えるかもしれない。
ここから近鉄津新町駅周辺にかけての区間は、国道163号という名前以上に「新町通り」という通称の方が圧倒的に知られている。津市史には、戦後復興の折、厳しい物資統制の隙間を補う形で生活必需品を販売する露店が立ち並んでいたことから、次第に商店街が形成されていく通り

終点付近にある水上マーケット

終点付近にある水上マーケット

の黎明期が記されている。
歩き始めた私を最初に出迎えてくれたのは、岩田川に沿って広がる水上マーケット。立ち並ぶ商店の前を走る歩道には、スレート屋根に鉄骨がむき出しの簡易なアーケードが掛けられている。戦後のいわゆる闇市がルーツで、当初は川沿いの狭い土地にバラックが並んでいたが、やがて水上にまでせり出す形で少し広い店舗が建てられた。昭和36年に床下は埋められたが、今も護岸いっぱいに並ぶ古びた建物は決して名前負けしていない。
今では、入口付近の建物は火災で焼失し、シャッターが閉まったままの店舗も多く、少し寂しい印象も受ける中、近鉄津新町駅方面に歩を進めていく。国道に沿って、昭和の面影を色濃く残す佇まいは終点として、インパクト十分な風景かもしれない。
アーケードを抜け、その先の津新町商店街を通過していく。飲食店を中心とした比較的新しい店舗、逆に小売り店は長い歴史を感じさせる店が並ぶ。戦前まではただの一つの通路に過ぎなかったというこの道が、戦後復興より津新町商店街の目抜き通りになり、やがて主要地方道に。それが、平成5年には国道へ

三重県の距離標

三重県の距離標

終点にある〝おにぎり〟

終点にある〝おにぎり〟

と格上げされていく流れには大きなドラマを感じる。
ようやく近鉄名古屋線の踏切にさしかかり、津新町駅を超え、どんどん163号を遡っていく。ここまでの所要時間は約15分。流石に疲労感は無いが、想定を下回るペース。ここ数年の不摂生でかなり体が鈍っていることだけは確信できた。
軽い気持ちでこの日の目標と定めた約20㎞先の長野峠付近までたどり着くのは難しいかもしれない。残り火と呼ぶには、まだ厳しい夏の日差しが私を急き立てるように降り注いでいる。額に浮かぶ汗をタオルで拭い、歩みを早める。(本紙報道部長・麻生純矢)