アサギマダラという蝶がいる。名前の通り、羽の浅葱色(薄青色)が印象的な大型の蝶だ。美杉で見ることができると数年前に知ったのだが、今年初めて見に行くことができた。
アサギマダラはフジバカマなどキク科の花の蜜を好む。美杉町太郎生の人たちが世話をするフジバカマ畑で花が咲くと、アサギマダラがやってくるのだ。
晴天のその日、畑のフジバカマは一面に薄ピンクの花を咲かせていた。畑の中の散策路を行くと桜餅のような香りがした。アサギマダラは花の上を優雅に舞い、花に降りて蜜を吸った。
この蝶は渡りをすることが知られており、各地でマーキング活動が行われている。捕獲した蝶の羽に印をつけて放し、その蝶を発見した地点を記録する。その活動の結果、北海道から山口まで、福島から沖縄までなど、千キロメートルを軽く超えて移動していることが判明した。なんと台湾まで飛んだ蝶もいるそうだ。華奢な羽でどのように海を渡るのだろう。
蝶の成虫である期間は四五ヶ月。フジバカマ畑に滞在する日もあるだろうし、一日一キロメートルも移動する計算になる。海を渡る先の島の位置を知っていることも不思議。小さな体で途方もない冒険をしている。
太郎生のフジバカマは今月末ぐらいまで咲くらしい。冒険の旅の途中の蝶を見てやってほしい。    (舞)