先月中頃、津駅近郊の津市上浜町の遊休地で建設系廃棄物の不法投棄が発生した。不法投棄といえば、人目につきづらい中山間地域特有の問題と思われがちだが、どのような場所でも被害にあう可能性がある。捨てた者が特定できない場合は地権者が廃棄物を処分せざるを得なくなるため、普段より自衛策を講じておく必要があるだろう。

 

被害にあったのは、主要地方道の県道10号津関線沿いの上浜町にある遊休地。同県道は、中勢バイパスから、津駅や県庁方面など、国道23号方面へと出られることもあり日中は通行量が多い。
被害にあった時期は、先月中頃から21日にかけて。地権者は離れた場所で生活しているため、異変に気付いた遊休地の近隣住民からの知らせで発覚。すぐ県警へ通報した。捨てられたのは壁土に木材、煉瓦、蛍光灯などの破片が混ざり合った建設系廃棄物。中型トラック3杯分で推定10t以上。
不法投棄といえば、中山間地域など、人目につきにくい場所で行われるものと思われがちだが、今回の現場は津駅西口から車で1分ほどの場所。地権者は「こんな街中で被害に遭うとは」と戸惑いを隠せない。
そのことについて、三重県の廃棄物監視・指導課は「少量の廃棄物を短時間で捨てて立ち去るゲリラ的な不法投棄はどこでも発生する可能性がある」と注意を促す。
三重県内では、平成24年度から平成28年度にかけて112件1万367tの不法投棄が確認されている。そのうち、建設系廃棄物は件数で68%だが、発生量では99%を占める。つまり不法投棄のほとんどが今回のような建設系廃棄物といえる。
また、処理に手間がかかり、他の建材と比べると壁土は処理費用が高い
のが特徴。今回の事例は悪質な業者が破格値で解体工事を請け負い、処理費用の負担を逃れるために不法投棄を行った可能性も否めない。
不法投棄は法人が行った場合、3億円以下の罰金が科せられる重い罰則がある。当然、撤去と処理費用も捨てた者の負担になるが、特定できなかった場合は、地権者は泣き寝入りするしかない。今回の事例も廃棄物の処理費用や運搬費用などを合わせると数十万円にのぼる可能性が高い。
現時点で、誰が不法投棄をしたかは特定できていないが市内の産業廃棄物処理業者は「我々の業界は、法律に基づく県の厳しい指導やチェックを受けており、違反すれば事業停止命令や業許可取消などの処分が下されることもある。普通の業者では絶対にありえない」と断言。建設系廃棄物の収集運搬許可を受けている市内の建設業者も「産業廃棄物の排出事業者として重い責任があるので関連法の内容をしっかりと把握し、適切に取り扱っている」と語るなど、今回の事例が産業廃棄物を扱う業種に広がる法令順守の意識と大きく逆行していることが分かる。
県では日常的にパトロールを行うなど、不法投棄の発生を未然に防ぐ取り組みを行っているが限界がある。社会全体で不法投棄に目を光らせるだけでなく、土地の入口に柵をしたり、ロープで敷地を囲むといった地権者の自衛も不可欠。また、安さだけに捉われて、解体工事の発注をすると知らず知らずの内に施主も〝加害者〟となってしまう可能性があることには留意すべきだろう。
不法投棄の情報は三重県の廃棄物ダイヤル110番0120・538・184。県廃棄物監視・指導課☎059・224・2388へ。