HACCP法(Hazard Analysis and Critical Control Point)の義務化の対象は、食品の製造・加工、調理、販売などすべての事業者で、飲食店やスーパーなど約350万施設である。指導に従わないなど悪質な場合は、営業停止などの処分を科すとされる。
バカボンのパパならば、「そんなのいつ国会で決まったのだ?」とでも言いそうだが、6月7日に衆議院は本会議で『改正食品衛生法』が、こっそりと可決成立していた。どの新聞・TVも全く報じなかったので、危うく私も見逃すところだったぐらいだ。もう新聞屋さんは、飲食店やホテル・旅館の広告は要らないとでもいうのだろうか?
この改正案は衆参両議院それぞれの厚生労働委員会で審議され、働き方改革関連法案などがあった為に先ず参議院で可決されていた。厚生労働省は、府省令を充実させて、細かい規定に対応したいとしている。
①HACCP(ハサップ)とは?
HACCPとは、細菌、農薬などといった危害要因を取り除く為に、特に重要な工程を継続的に監視・記録する管理方法の事である。具体的には、原材料の受入から最終製品になるまでの間で起こりうる危害とその要因をあらかじめ分析し、リスト化して、重要管理点(健康被害を防止する上で重要となる製造工程とそれに対する対策、基準)を決め、それを継続的に監視することで食品の安全を確保するものだ。
日本に於いては、食品販売額100億円以上の大規模事業者の87・4%(2017年2月現在)が既に導入済みだが、50億円以下の中小事業者では33・5%(同)にとどまっている。
HACCPの導入利点は、品質の向上、生産性の向上、製造量の増加が期待できる事だとされている。つまり、工場内が衛生的になると、製品の細菌が減って長持ちし、温度管理が正確になると、火を通しすぎる事なく殺菌ができ、製造の流れや人の動きが可視化されると、無駄を減らすことができるため、生産効率が上がって製造スピードが速くなるそうだ。
厚生労働省は義務化が進む国では「HACCPを実施していないところからは輸入しない」というのが常識だとし、全ての食品製造加工にHACCPを義務付けるとの方針である。おそらくこれは、EPA協定を締結したEUでは規模や業種に関係なく、一次生産者を除く全ての食品の生産、加工、流通事業者を対象として導入を義務付けているからだろう。EU域内の消費者の口に入るものには、全てにHACCPが必要なのだ。
輸出食品だけではない、導入目標とされる2020年は、東京五輪による大規模な弁当需要も見込める。HACCPなきもの締め出しだ。
ちなみに、一昨年伊勢志摩で開催されたG7サミットのお巡りさん用弁当65万食は、結局のところセントラルキッチン方式とスケールメリットと物流力を有する大手コンビニの寡占となり、地元中小業者にはガス抜き程度のささやかなイベントとなった。
このお巡りさん弁当は、三食飲物付きの1700円(一食あたりの平均は飲物付きの566円)だったが、この約3億6800万円の特需が地元にもたらされる事は殆どなかったのである。
なお、厚生労働省は、中小事業者は食品の保存温度を日誌で記録するだけですむよう簡略化するなど、一部の要件を緩和するとしていた。費用や人員確保の負担への配慮からだ。とはいえ、そのコストは原価に算入して売価を見直さない限り、自分持ちである事に変わりはない。
アメリカやカナダでは、水産食品や食肉などの一部の食品でHACCPが義務化されているだけであり、東南アジア諸国などは、状況に合わせて導入したりしなかったりである。はたして、少子高齢化による地域需要の減少下において、敢えて全ての食品の生産、加工、流通事業者にHACCPを課す真意は何なのか?
私はそこに、EU市場に対するメイド・イン・チャイナとの差別化と、異物混入テロ対策、そして『椅子取り』政策、つまり市場縮小を見据えた地域産業の淘汰・再編の目論見をみる。
続く。
(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)