福祉タクシーの業務も今年で7年になった。「安全、安心で交通弱者のために」を唱えて走行し、医療搬送の「民間救急」も営業する中で、不規則な生活にもいつしか体が慣れてしまった。
そんな時、映画館で見た「万引家族」の困窮し不規則な日々の生活描写が自分の生活と重なり、バックミラーごしに万華鏡のように点灯しては消えていく。タクシードライバーとして、特別な思いがする。
ある日、小さなちょっとしたことがきっかけで、考え方の回路を変えることがあった。
ちょうど孫が誕生し、実家で面倒を見る機会が増えてきた。福祉タクシーは、毎日出発時間や送迎客も変わるし、まして長距離搬送になると、積載機器類の用意と下準備が一段と多くなる。そのため、業務の中に更に新たな業務ができるのを心配して、孫の面倒も最初は戸惑った。
当然仕事優先だが、朝から夕方まで毎日ドライバーと介助、患者搬送の業務を繰り返していると、ストレスもどんどん溜まる。そんな時、鈴木知事が実践しているイクメンならぬ「育ジイ」を思い出し、自己流にやってみようと思った。知事の激務とは雲泥の差だが、これも試しと思い、途中で投げ出すのも覚悟しての育ジイだった。
車輌の準備や事務仕事を進めながら、母親(私の娘)が立ち寄っているときはいつも見守り、抱っこ役や洗濯、米とぎ、ゴミだし、オムツ交換、入浴…、時には泣きじゃくるから、何を主張しているのか推理する。これこそ、仕事とはまた違う動作ながら、〝段取りをしていく〟という点でぴったり合った。
つまり「準備をする」ということではタクシーも育ジイも同じで、特別に身構える必要はないことが分かった。
60歳を過ぎて年齢的にも新たな一歩を踏み出す育ジイの実践は、思わぬ効果を持たらした。今どきの育児は、スーパーマンのように色んなことをこなすものらしいし、一般的におじいちゃん世代は豊富な時間もある。これまでの様々な経験も生かされるが、自分の仕事は福祉タクシーだから介護、オムツ交換もできる。仕事柄、お年寄りに接する時間も多いからだ。
結構大変な作業になると思ったが、何よりも業務時の緊張でストレスが溜まるのを防げ、ドライバーとして運転する時に走行に集中させてくれる。ひょっとして働き方を改革させてるのか?とも思う。
これでメリハリのあるスケジュールにもなった。スパっと準備をこなし、気分的にも楽になって、しあわせホルモンの減少を防いでくれる。仕事を定年などでリタイアした人にもお勧めだ。
ただし、昭和の頃の幼少のように、夕食の仕込みをする母親の背中におんぶされて、竃(かまど)の煙を思い切り吸い込んだり、危険な所を省みず歩行させたりするなどの行為は今では通用しない。孫と接する時は清潔に、服装もさっぱりと、手洗いも怠ってはいけないのが今流。
ある日、三重中央医療センターで聞いた勉強会で「2022年以降、後期高齢者人口が急増。高齢者が自身の能力に応じた、自立した生活を送ることが何より大切」と言っていた。これからも、せっせと育ジイ学を実践して、魅力ある世代になっていければよい。
(民間救急 はあと福祉タクシー)