国道163号と並走する道路を歩く(精華町柘榴付近)

国道163号と並走する道路を歩く(精華町柘榴付近)

京都府と奈良県の県境

京都府と奈良県の県境

精華町を国道に沿って進むと、とうとう歩道が消えた。もう慣れたとはいえ、車道の端のわずかな路側帯を頼りに進むことは避けたい。少し背伸びをして、先を見渡すとどうやら地元の集落の生活道路が国道と並走しているようだ。
国道の北側を走る道は集落に入る部分が斜面になっている。そこにある道路標識に立てかけられた一枚の看板を見ると、「柘榴」というこの集落の名前が書かれている。
名前を目にした瞬間にぱっくりと割れた実から無数の赤い粒が顔をのぞかせるザクロの姿が脳裏に浮かんだ。子供の頃、近所に生えていたザクロの木になった果実が収穫されないまま、放置されていたので恐る恐る実をもいで、粒を口に入れたところ、とても美味しかったのを覚えている。日本では、庭木などの観賞用にされることが多く国産物は余り流通していないが、イランなど中東諸国など海外ではよく食べられているようだ。
ザクロの木がたくさん生えていたのか、はたまたザクロと縁がある鬼子母神をまつる寺院があったのかなどなど、想像を膨らませながら、国道を見下ろす形で並走する道路を進む。どこにでもあるような田舎の風景だが、遠く離れた県外でまず立ち寄ることがないので興味深い。まして、国道と並走する生活道路で今後、車で通ることもまずない。こういう何気ない景色ほど、深く記憶に刻まれるから不思議だ。
柘榴の集落を抜けると京都府と奈良県の県境。津市の終点から、思えば遠くへきたものだ。心を躍らせながら県境をまたぐ。ここからは奈良県生駒市。奈良県の北西部に位置し、隣接する大阪府のベッドタウンとして栄えている。人口は約12万人で国道は約50㎢ある市域の中央よりやや北を横断。市内中心部は国道の南側に位置する形。市内北部にある生駒山は霊山としても名高く、周囲の生駒山地には、役小角が鬼神・前鬼と後鬼を調服し、従えたという伝説も残っている。
県境をまたいだとはいえ、国道沿いの景色は、これまでと大差無く、のどかな景色が広がっている。時刻は13時前で、ここまでの行程は順調そのもの。新しいランニングシューズも軽く身体全体の疲労感はそれほどでもない。だが、左かかと付近の足裏に、痛みを感じている。最近、長距離を歩いたり、固いものの上を素足で歩くとこのような症状が出るようになっている。症状をネット上で照らし合わせると、足裏の筋膜が炎症を起こすことによって起きる足底筋膜炎と似ている。ほんの軽い症状で、日常的な痛みはほとんどないので、気にしていなかったが、後日念のために医師の診察を受けようと思っている。
今日は、どこまでいけるのかわからないし、関西圏の交通事情には明るくないが、道路標識で頻繁に見かける四条畷市が距離的にも丁度良い具合に思える。時間と足と相談しながら国道をぶらり歩いていく。(本紙報道部長・麻生純矢)