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9月28日㈮10時。私はJR木津駅前の有料駐車場に車を停め歩き始める。空は澄み渡り雲もわずか。この1カ月、雨と台風に悩まされてきただけに歩き始めたばかりにもかかわらず、既にカタルシスすら感じている。しかし、この高揚がもたらす不注意が、ちょっとしたトラブルを引き起こすことになるとは、夢にも思っていなかった。
木津駅から国道163号と国道24号の合流区間に戻り南進。奈良と京都を結ぶこの区間に沿って様々な店舗が軒を連ねている。すぐに両線は分離し、163号は西、24号は南へと各々がしなやかな軌跡を描いていく。
163号を包むように広がる水田は黄金色。収穫の時を待つばかりだが台風が間近に迫っているのが少し心配である。道路標識には、四条畷と大阪の文字。いよいよゴールが間近という実感がわいてくる。
その後、少し進むと京都府相楽郡精華町。この町は総面積約25・68㎢と大きくはないが、産官学連携で創造的な学術・研究の振興で、新産業・新文化などの発信の拠点・中心となる大阪府、京都府、奈良県にまたがる広域都市の「関西文化学術研究都市」の地理的な中心に位置している。国道沿いののどかな丘陵地帯には、様々な企業の研究施設や、大学なども点在している。東京の国立国会図書館の蔵書収容能力を補完し、高度情報化への対応を目的に建てられた「国立国会図書館西館」も町内にある。
地理的な条件からも、結びつきの強い京都、大阪、奈良はまとめて「けいはんな」と呼ばれ、施設や電車の路線名にも使われている。見慣れない文字群に最初は、意味が分からなかったが「京阪奈」という文字を見て納得。優しい雰囲気が漂うひらがなは地域の愛称としては気が利いている。
国道を歩き続けること2時間。国道沿いの焼き肉店で昼食。店内に入り、席についた私はメニューを開く。手早く済ませたかったので牛肉と野菜の炒め物がメインの定食を注文する。
3分の1くらい食べた頃、私の隣の席に年の頃だと70代後半の男性が座った。慣れた様子で店員に声をかけ、カルビがメインの焼肉コースを注文。男性は料理が運ばれてきたり、コップに水をついでもらう度に店員に「おおきに」と優しく声をかける。これまでもドラマの中で、幾度も耳にしてきたが言葉だが、男性が発するそれは、今までのどれとも違った。京言葉ならではの柔らかいイントネーションには、男性のこれまでの人生と日本語の美しさが凝縮されている。
ちなみに、おおきには「ありがとう」という意味に勘違いされがちだが、本来は「非常に」という意味。男性にとっては幾度となく発してきたで言葉のはずだが、私にとっては非日常の言葉。こういった方言との出会いも旅の醍醐味。僥倖をもたらしてくれた感謝の意味を込め、心の中で男性に「おおきに」と声をかけ、店を後にする。(本紙報道部長・麻生純矢)
2018年10月11日 AM 4:55
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