9月25日、国連世界観光機関駐日事務所とアジア太平洋観光交流センターは、共催シンポジウム『メガイベントを通じた地域振興・地域活性化』を開催した。会場は大阪府立国際会議場。松阪からは近鉄で難波、そして大阪メトロで阿波座。だが、久し振りの故郷は静かな雨に包まれていた。

主催者挨拶は、大阪商工会議所の会頭であるAPTECの会長。そして、マドリードの国連世界観光機関の新しい事務局長だ。
彼は在スペイン・ジョージア(旧称グルジア)大使などを務め、今年1月に就任、年頭メッセージでは気候変動との闘いについても言及していたが、今回はどちらかといえば主賓のようである。彼はバルセロナを好例として挙げると、冒頭でAPTEC会長が述べた4つのメガ・スポーツイベントが、日本のブランド力と日本の見える化に貢献するだろうと述べ、挨拶のみで会場を後にした。4つのメガイベントとは、東京五輪2020、ラグビーワールドカップ2019、東京パラリンピック2020、そして、ワールドマスターズ・ゲーム2021関西だ。
今回は日本人による日本人のためのシンポジウムである。

来賓は近畿運輸局の局長だった。彼はこの8月に着任したばかりで地震と台風に対峙した。月並みではあるが、更なるインバウンドの増加、消費額の向上、地方への分散、そして、国際イベントの連携をかかげた。

基調報告は、UNWTO観光アドバイザーによる『メガイベントを観光振興に最大限活用するために』だった。彼は、5つの分野の中の21の視点を語った。中でもクラウディングアウト、つまり五輪による価格高騰、混雑、安全面の懸念から起きるインバウンドの敬遠現象は、私が昨年『民泊勉強会』で述べた持論のデータと完全に一致していた。
次は、日本スポーツツーリズム推進機構代表理事の早稲田大学教授による講演で『メガイベントを活用した観光振興レガシー』だ。教授はインフラだけがレガシーではないと述べ、スポーツと文化と観光の協調を提起した。特に武道はアトラクションとしてお勧めだそうだ。
そして、関西観光本部の事務局長による『メガイベントを関西の観光振興に活かす』。局長は知名度の高い京都や大阪を基点にして、この広域連携DMO(三重も含むが)に属する県への送客を促し、関西全域の底上げをしたいと語った。

また、株式会社マーケティング・ボイス代表取締役社長による『観光振興へのイノベーション、テクノロジーの活用』では、近未来のデジタル化旅行シーンを紹介。最後は、JTBの執行役員でスポーツビジネス推進担当による『観光による地域活性化の鍵』だった。彼はインバウンドは人口の倍が理想だが、20030年の目標6000万人・15兆円は、個人的には難しいだろうと述べた。

 5時間余に及んだシンポジウムの閉会の挨拶は、国連世界観光機関駐日事務所の代表だった。が、今回のシンポジウムでは黙して語らず全くの聞き手に徹していた。それだけに、日本も英国に倣って、スポーツ文化観光の庁あるいは省を目指しているような感がある。なにしろ彼は観光庁の初代長官だ。今回誰も言及しなかった、ロンドン五輪後の英国にインバウンドが増えた本当の理由も、メガイベントは次期開催地のプロモーションが始まれば、我が国の情報が激減する事も、重々ご承知の筈である。
(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)
※DMOとは官民などの幅広い連携で地域観光を積極的に推進する法人組織。地域が一体となって市場調査や情報発信、収益事業等を展開する。