愛知出身で、子供時代に津市美杉町丹生俣に住み農業や里山に魅せられ、現在も丹生俣に拠点を持つ飯尾裕光さん(43)。ビジネスやイベント運営などで得た経験・ノウハウを生かして2013年から毎月28日、名古屋の東別院で「東別院てづくり朝市」を催し、平均5~6千人を集客。寺や地域の賑わいに貢献してきた。約半年前から「美杉むらのわ市場」にも携わり、美杉の関係人口増加を目指している。

 

飯尾さん(後列中央)と美杉むらのわ市場のメンバー(9月28日、東別院てづくり朝市で)

飯尾さん(後列中央)と美杉むらのわ市場のメンバー(9月28日、東別院てづくり朝市で)

飯尾さんは愛知県津島市生まれで、健康食品などを扱う「㈱りんねしゃ」=同市=の2代目。同市で体験農園なども運営している。親が田舎暮らしを希望したため小学4年から数年間、津市美杉町丹生俣で暮らし農業や里山に魅せられ、愛農学園農業高校、三重大学生物資源学部卒業。現在も丹生俣に拠点を持つ。
また本業やアースデイ名古屋をはじめ、数々のイベント運営、組織マネジメントの勉強などから得た経験・ノウハウを生かし、妻らと共に2013年から東別院(真宗大谷派名古屋別院)=名古屋市中区橘=で、親鸞上人の命日に因み毎月28日に「東別院てづくり朝市」を開催。飯尾さんが交流し主観で「良い」と思った約220店が出店し、丹精込めて作られた商品やお洒落な雰囲気が人気を呼び、来場者数は平均5、6千人、開催日が土日だと1万人超。東海地区のマルシェでも有数の規模・来場者数を誇る。

多くの出店や来場者で賑わう「東別院てづくり朝市」

多くの出店や来場者で賑わう「東別院てづくり朝市」

この朝市を始めたきっかけは、飯尾さんの周囲の農業や木工、音楽などに携わる大勢の同世代が、商品の販売方法を模索していたこと。また妻が、母親達が安心して買い物したり気軽に関われる場があればと考えた。更に朝市は生産者と消費者が直接交流できるため、環境や食への意識が高い生産者らが暮らし方・生き方を伝える場にも向いている。
11年、愛知県の甚目寺観音で朝市をスタートし人気に。それを知った東別院から多くの人が寺に来る機会を作りたいと声がかかり、東別院でも始めた。 朝市の賑わいの理由は「出店者を大切にして楽しんでもらい、会場に楽しそうな雰囲気を作っていること」。これを実現するため、出店のルールは設けていない。ルールを守ることが目的化し、本来の目的である円滑な運営を妨げる恐れがあるからだ。出店者からの問い合わせには、飯尾さんが経験・ノウハウに裏打ちされた価値観で都度判断し応えている。
そして飯尾さんは、ふるさとであり過疎化が進む美杉町で13年に始まった「美杉むらのわ市場」=岩田知子代表=にも、半年程前から携わっている。同市場は今年4月~12月は毎月9日開催。周知や集客が課題で、飯尾さんの協力で8・9月に東別院の朝市に出店し、メンバーが大勢の客に対して売り込みを経験する貴重な機会となった。
飯尾さんは「むらのわ市場に関しては、長いスパンで考えている。過疎地の復興や地域振興がうたわれ、皆、観光地になるために必死だけど、僕は美杉を観光地にしたくない。日本で一番有名な過疎地にしたいんです。里山の魅力を都会の人に伝えるためには、ものすごく当たり前の空間に来てもらわないといけない。関係人口(地域や地域住民と様々な形で関わる人々)を生み出す場所を里山に作らないと意味がない。その軸の一つになるのがむらのわ市場だと思う」。
今後も、本業とは別の〝使命〟として、朝市の運営やむらのわ市場の活性化に取り組んでいく。