ジムに行くといろんな人に逢う。私が利用する時間帯は、退職後のおじさんや少しばかり年季の入った私みたいなおばさんが多い。そこで見るおじさんたちが面白い。ご近所や職場で見る姿とはひと味違うのだ。
きょうは、プールの中をにこにこと話しながら歩くおじさんたちを見た。水の中を行くその楽しそうなこと。そして、なにを思ったか、二人で水の掛けっこを始めた。どう見ても六十代のおじさんが、まるで小学生男子だ。
職場では重々しくハンコをついたり、部下を叱ったりしていたはずの人たち。仕事を離れるとこんなに無邪気な笑顔を作れるのかと、見ていて楽しくなった。
そうかと思うと、重々しい表情のまま、崩れないおじさんもいる。「こんにちは」と明るく挨拶しても、表情を変えず通り過ぎる。何度も挨拶を無視されると、こちらも愉快ではない。でも、会社ではずっとお偉いさんでいたので、見知らぬおばさんが馴れ馴れしく挨拶してくるのに戸惑っているのかもしれない。悪気はないと思いたい。
もうこれからはただの人だから、挨拶ぐらいできるようになろうねと励ますつもりで声を掛け続けると、そういう人たちもたいていは挨拶を返してくれるようになる。はにかみながら笑顔を返されると、おじさんウオッチャーはうれしい。「よく成長した」と密かに拍手を送っている。 (舞)