低所得者向けに整備された公営住宅だが、家賃の滞納が全国的な問題となっている。津市でも累積した市営住宅の滞納額は5億円以上もあるため、近年では支払いに応じない悪質な滞納者に関しては、法的措置による強制退去など厳しい対応も行い、収納率の向上に努めている。元々は、〝福祉〟という観点で整備されたが、原資は血税であり、入居者間の公平性に基づく更なる取組みも求められている。

 

低所得者に安価で住まいを提供するという福祉的な面から地方自治体が整備して貸出を行っている公営住宅。しかし、総務省調べによると平成27年度で、1カ月以上家賃を滞納しているのが20万7232世帯で滞納額は約504億円にも及ぶ。
津市でも集合住宅や一戸建てを合わせて2356(今年4月1日現在)を所有しており、累積された家賃の滞納額は平成29年度末で約5億2467万円にのぼる。
合併当初の平成18年度に約3億900万円ほどだった滞納金は、一時期毎年約3000万円ずつ膨れ上がり、最大で平成27年度には6億円近くまで増加。収納率も平成20年度に現年度分が80・7%まで低下した。
ここまで積みあがった背景には、福祉目的で整備されたという経緯から家賃の滞納整理に本腰を入れてこなかったことがあげられる。1世帯当たりの最高滞納額は500万円を超えており、400万円超の滞納者も数人いる。市営住宅の滞納額は、税金や国民健康保険などと違って時効がなく、回収が難しいものも含まれているとはいえ、公営住宅法では3ケ月以上の家賃滞納で明け渡しを請求できる。それを考えれば、甘いと言われても仕方がない。
事態を重く見た津市市営住宅課では、近年滞納整理に力を入れている。通常は滞納者には、納付指導や額が大きい場合には分納の誓約をしてもらうという対応を行っているが、納付する意思がないとみられるような悪質な滞納者には、法的な手続きを実施。それによって家賃の支払いに応じる者とは和解、応じない者には強制退去を求めるなど、毅然とした対応をしている。法的手続きを行ったのは平成29年度で39件に至る。
この毅然とした対応が結果として、納付指導や分納誓約に重みを増すこととなり、現年度分の納付率は平成27年度の90・7%から、平成28年度94・6%、平成29年度97・8%と短期間で大きく改善している。
滞納総額自体は減少しているが、その裏で大きな問題となっているのは、過去から引き継いだ過年度分の収納率。現年度分が大きく改善した平成29年度でも8・7%しかない。5億円以上に積みあがった滞納金の中でも、日常的なコンタクトが取りづらい退去済みの滞納者は約2億円という大きなウェイトを占めており、津市では今年度より民間業者に委託した債権回収を実施。更なる収納率向上をめざす。
もちろん、市営住宅は福祉的な経緯で建てられているので困窮して家賃が払えず、生活保護など福祉的なサポートが必要な場合は、援護課を紹介するといった課を越えたフォローも行っている。
連帯保証人に滞納家賃の肩代わりを積極的に求めてこなかった点など、甘さを指摘する声もあるが、改正民法の施行で連帯保証人の在り方が大きく変わる可能性が高い。まずは、負の連鎖の解消をめざした滞納させない取り組みが先決となる。
津市の近年の努力は評価できるが、入居者間の平等性と共に原資である血税の重みを改めて考え、これまで以上の取組みが求められよう。