「奈良先端科学技術大学院大学」付近(奈良県生駒市高山町

「奈良先端科学技術大学院大学」付近(奈良県生駒市高山町

歩道無き道をゆく(奈良県生駒市鹿畑町付近)

歩道無き道をゆく(奈良県生駒市鹿畑町付近)

生駒市史では国道163号は主要道路であった一条街道と清滝街道を一つに結んだものと説明されている。市史が綴られた1985年でも重要な道と位置付けられており、無論それは今日でも変わらない。ただこの市史で面白いのは、国道163号が四日市市に達する道路と記載されていることだ。
これまでにも何度か説明したが、国道163号は元々、大阪市と四日市市を結ぶ国道だった。それが、名阪国道の開通した1963年に旧上野市から四日市市までの区間が切り離され、国道25号へと編入。その後、1993年に旧上野市から津市の岩田橋北交差点間が国道に編入されて今の形となった。つまり、この市史が書かれる20年以上も前に四日市市に達する道では無くなっているのだ。関西方面には国道163号のことを、この市史が書かれて30年以上経った今も四日市線と呼ぶ人がたまにいるそうだが、それを証明するような記載である。後に国道へと編入された区間が走っている津市の方々にとっては特に面白く思えるのではないだろうか。
さて、話を旅路に戻そう。生駒市に入って、のんびりと山間の地域を歩いていると案の定、再び歩道が消えた。路側帯もほとんどないので、身を縮めながら白線をなぞるように歩いていく。
道路の両端が木々や草に覆われ、見通しの悪いカーブ箇所には、ご丁寧に「事故多発地帯」と書かれた立て看板。ここまでの行程で何度も同じような経験をしてきたが、一つ間違えば大事故に繋がりかねないことには変わりない。慎重に進んでいく。
生駒市も関西文化学術研究都市を形成する一都市であり、その中核である国立大学の「奈良先端科学技術大学院大学」は国道163号に沿う場所に立っている。この大学には、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さんが現在の京都大学の前に在籍。今や誰もが知っているiPS細胞の研究を開始した地でもある。
そんな場所とも津市が一本の道で繋がっていると知れば、驚く人も多いのではないだろうか。何気なく普段通っている道の先には、世紀の大発見に関わる地が待っているのだ。
同大学を越え、更に国道を進んでいくが何度か車道の端を歩く羽目になり、肉体的にも精神的にも疲れを感じ始めている。先述した左足裏の痛みも気になり始めているので少し広めの歩道の端で休憩。腰を下ろしポケットからスマートフォンを取り出し、地図を確認する。どうやら間もなく大阪府の県境で、それを越えれば四條畷市に入るようだ。
やはり、ここからの距離と日没までの時間を考えると、JR四条畷駅が今日のゴールだと確信する。(本紙報道部長・麻生純矢)