津市消防本部が平成25年から認定を始めた「患者等搬送事業」は、救急車を呼ぶほど緊急を要しない人を対象に、入退院・通院・転院や福祉施設への送迎などを行う民間のサービス。市内では福祉タクシー・介護タクシー業も行う6者が認定を受け、年間約6500件の搬送を実施。不要不急の救急車利用の抑制に貢献している。一方、一般への事業の周知が課題で、同本部は今後もPRに取り組んでいく。

 

 

津市内の救急出動件数は高齢化の影響などで増加の一途を辿っていて、平成21年は1万1289件、29年は1万4901件、30年は速報値で1万6445件。このうち約半数が軽症患者で、必要に迫られて救急要請し結果的に軽症だった場合もあるが、風邪など明らかな軽症や、通院時のタクシー代わりといった不要不急の要請も多く、重症患者の搬送に支障をきたし問題となっている。
一方、民間業者が行う「患者等搬送事業」は、救急車を呼ぶほど緊急性のない人を対象とした、入退院・通院・転院や福祉施設への送迎などのサービス。搬送中に医療行為が必要な場合は搬送元の病院の医師が同乗するなど、医療機関と連携して行われることもある。
認定制度が平成20年頃から東京で始まり、全国に広まった。身体障害者や高齢者などが利用する福祉タクシー、介護タクシー業者が認定を受け実施するケースも多い。
津市消防本部では平成25年に認定を開始。利用者の安心・安全を守るため、認定条件を、消防が行う24時間の講習を修了した人か、修了と同等以上の知識・技能を持つ看護師や救急救命士などの乗車、車椅子・ストレッチャーを固定する装置をはじめ要件を満たす搬送用車両、応急手当に必要な資器材の積載などと定めている。更新には2年ごとに再講習の受講が必要で、認定期限は5年。
市内の認定事業者は現在6者で、事業者によって、営業時間や搬送のエリア・方法・装備品は様々。24時間対応や、病院内の付き添いをしたり、積極的に営業活動して県外の医療機関とも繋がり全国各地への搬送を行っている業者もある。
そして年間搬送件数は福祉タクシー・介護タクシー業も含め6者合わせて約6500件に上り、不要な救急要請の抑制の一助となっている。
一方、この事業は医療・福祉施設関係者には比較的知られていて搬送の依頼に繋がっているものの、一般市民へはあまり周知されていないのが現状。そのため同本部ではイベントなどの際、救急車の適正利用とともに事業をPRしている。
市内のある事業者は、「この事業を広く知って頂きたい。今後も交通弱者を助けると共に、本来の消防救急の一助になれば」と話す。事業の発展には消防・事業者の連携による、より積極的なPRも欠かせないだろう。

なお津市消防本部が認定した患者等搬送事業者の名称・連絡先は、津市のホームページに掲載されている。リンクはこちら http://www.info.city.tsu.mie.jp/www/contents/1001000007205/index.html