今日のミッションは、石川県七尾市から三重県まで推定約5時間の患者搬送。出発地域は大規模な温泉や新鮮な魚介類を連想するが、依頼者は同方面へ旅行中に体調を崩し、入院先から地元への帰宅搬送依頼案件だ。
患者搬送業にとってこのような時、最も心配するのは、所用時間が長いために道中の患者急変時の対応や道路状況、気象など。ドライバーとして事前チェックすることは色々ある。途中から何が発生するかわからないので、あらゆることを想定て器材も用意しなければならない。
当社の民間救急搬送は全国各地の事業者と連携し、時には陸路で新幹線の最寄りの駅までストレッチャーで行き、多目的室へ誘導、他の民間救急事業者に交代し、目的病院へ搬送するケースなどもあるが、今回は夕方の出発。とにかく、何時でもよいから地元へ到着したいという家族の願いも込められている。このため、陸路での搬送をすることになった。
どうしても、家族の思いを叶えてやりたい。そのためには、搬送元病院や家族から体調のほかに詳細な情報を聴くことも必要だ。
行程は、能越自動車道を南進。北陸道に入り、金沢から敦賀、名神高速、東名阪道へ。予報によると、途中は霧が出ており、渋滞も予想され決して良いコンディションとは言えない。
とっぷり暮れた七尾湾。凪いでいて外景は穏やかだが、ここから気合いを入れねばならない。近くにある病院へ横付けし、病棟で担当看護師らと患者の状態について再度確認した。皆が安全に着くようにと、手を振って見送ってくれる。
患者の体調は、比較的安定している。道中も様子を確認し、水分補給やオムツ交換の必要があればその都度パーキングへ寄ることになる。ただ、車中で交換するのはスペース的に難がある。ストレッチャーで障害者用トイレへ誘導することも、体調や安全上問題がある。できれば夜間ということを味方につけて、そのまま睡眠を継続してもらえば一番よい。家族の励ましも効果的。課題を考えつつ、黙々とアクセルを踏んだ。
時折、患者の様子を伺うが、これまで病室で寝返りができたベッドから、即ストレッチャー上である。窮屈感は否めない。そのため、時々車を停車して「〇〇さん、体調はどうですか?」と声をかける。腰部が痛いと言うので擦り、介抱することでまた眠りについていった。
午後7時を過ぎるあたりから、長距離トラックなどで高速はいっぱいになる。中にはスピードを出したり、あおり運転ともとれる一般車もあったり、運転にかなり集中力がいる。
それらをこなして、ようやく目的地にさしかかったのは、午前零時を過ぎていた。
ここからも、ストレッチャーから室内へ担架で移乗する必要がある。家の外形、動線の安全確認などをしっかりして患者を入れるのは、消防での講習やDMAT(広域災害派遣医療訓練)などの経験が生かされた。
患者、家族もよく頑張った。最後に「どうも、長い時間ありがとうございました」との言葉を受け、全ての搬送が無事に終わったことでようやく安堵感にかわる。
どのような案件に出くわそうとも、今後も患者搬送(民間救急)の認知度を高め、少しでも交通弱者のために手助けができるよう、頑張っていきたい。
(民間救急はあと福祉タクシー)