お正月には百人一首。子どもの頃からそうだった。その頃には電子ゲーム機もなく、大人が一緒に遊んでくれる百人一首がお正月の楽しみだった。
私が初めて覚えた札は「田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ」だった。雄大な富士の美しさを詠んでいると、小学生にも理解できた。
中学生の頃のお気に入りは「陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにしわれならなくに」だった。心が乱れるのはあなのたのせいというところが、思春期の少女の心を揺らした。
でも、この「しのぶもぢずり」の部分は、モジズリソウのことだと思っていた。初夏にピンクの可憐な花をつけるネジバナのようにねじれる恋心。
それがもじずり染めのことだと知って、少しがっかりした。初めと染めがかけてあったとは。石の上に布を置いて草を刷り込むという染め方だと、美しい色合いの布になるとは思えない。歌のイメージが変わってしまった。
さて、今心に響く札ならば、断然「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」だ。若い頃やろうと思えばできたのに、やり残してしまったことは数多ある。ぼんやりしているうちにこんなに時が過ぎてしまったという思いは、小野小町みたいな美女でなくても持つもの。小さな後悔なら誰の人生にもある。  (舞)