▼雲出川・里山風景展=~10、岩田川久画廊
▼マドンナ新春発表会=10、農業屋コミュニティ文化センター
▼櫻井紀邦個展=13~17、三重画廊
▼米田杯争奪三重県団体卓球大会=11、サオリーナ
▼東海レディースソフトテニス役員対抗戦=13~14、サオリーナ
▼池山洋子ピアノリサイタル=11、津リージョンプラザお城ホール
▼岐阜経済大学駅伝部監督・揖斐祐治氏講演会=9、アストホール
▼第2回齋藤拙堂顕彰小中学生書道展=9~11、津リージョンプラザ
▼三重ビッグバンドフェスティバル~きらめくプロとの競演~=9、県総文大ホール
▼未来をのぞく住宅展=9~11、県総文第2ギャラリー
▼マリンズダンスパーティ(社交ダンス)=11、県総文第1ギャラリー

 玉置町はのうなってもうた

(前回からの続き)
丸の内蔦町の小さな産婦人科にタンカをおろした。ここも負傷者であふれていた。
「よーし、今度はこれを養正国民学校へ持ってけ」、警防団の命令で手当ての済んだ負傷者を収容所の養正国民学校(かつて電電公社、現在のNTTに運んだ)。尻にぽっかりと15センチもの穴があいた婦人。赤チンが塗ってあるだけ。もう血は出尽くしたのか。手当てのしようもないのだろう。養正国民学校の講堂には、床の上に負傷者がゴロゴロと、所せましと横たわっていた。
夕方、負傷者運びに疲れて我が家に向かったが、玉置町付近はまだ炎の中で近寄れなかった。
仕方なく安濃川を渡って安東村へ向かった。打ちひしがれた心に、負傷者の目だけが焼き付いていた。刺すような目、笑い狂っているような目が…。
津観音前の津警察署の警防主任、奥山警部補(28)は署の地下にある留置場を改造した防空指令室にいて、爆弾の凄まじい衝撃を数えていた。
ガラガラッと来るたびに腹を突き上げられ、吐きそうになった。
「橋内(塔世橋から岩田橋の間が奥山主任の責任範囲だった)、橋北のいたるところに爆弾。乙部の海岸にも落ちた!砂けむりで何も見えません」
「どの附近か、どの程度か言え!」、署の屋上の望楼の監視員にどなったが、被害状況はわからない。
「全員集合―っ」手分けして調査をするために全署員を出し、自転車で現場へ向かった。東検校町から入ったが、道路は倒れた家々によってふさがれていた。走った。玉置町、榎の下方面の火炎を吹く町から死体を背負って走ってくる人、防空壕の中で死んでいる家族。負傷者も三重師範の救助隊員もどちらが負傷者か判らぬくらいドロドロの血にまみれていた。
玉置町、北堀端、西堀端に近づくにつれて、惨状はますます酷くなるばかり。西の方、安濃川堤の下付近は真っ赤な炎を吹き上げ、消火隊が走り回っている。
玉置町の防空壕の中で、母親と子供三人が埋まって死んでいた。母親は一番小さな乳飲み子を抱きしめ、その上の男の子の頭を股の間にしっかりとはさみ、一番上の小学五年生くらいの男の子が弟の上にかぶさって死んでいた。生き埋めだったらしく、少しも火傷の痕跡がなく、みんな安らかな死に顔をしていた。
 「身元の判りそうな遺体とバラバラの遺体を分けて集めろ」、奥山主任の指示でお寺、公会堂、養正国民学校…と負傷者が運ばれ、遺体は地面の見えている所に集められていった。
夥(おびただ)しい数だ。ちぎれた手や足も、みるみるうちに山と積まれていく。夕方からは、まだくすぶる町のあちこちで荼毘にふす光景が見られた。
爆弾でできた穴の中に廃材を集めて遺体を火葬していた。警官や警防団も身元の判った者から順々に道端で火葬した。家族の見つからぬ遺体は衣類や靴などを保存しては火葬した。
これまでの二度の空襲では死体検分調書も詳しく取ったが、今度はとても遺体の数が多すぎてとれもそれはできない。氏名を書き付けるのがやとこさだった。
署員は翌日から生存者をたずねては死傷者の全調査にかかった。しかし、一家全滅、近隣者は遺体を焼くと身寄りをたよって散り散りになって疎開していった。調査は時間のわりにはかどらなかった。玉置町付近一帯の空爆による死者数は永遠に謎となってしまった。
閑静な武家屋敷の町、玉置町は一瞬に数多くの爆弾で滅びた。安東村周辺で、とにもかくにも一家の無事を確かめあった山田寛さんは、翌日玉置町に帰った。
爆撃で榎の下方面など数箇所から出た火は、玉置町、北堀端の西半分から安濃川まで一面を焼き尽くし、まだそこここから白い煙が上がっていた。人影は少なく死の町だった。
「やがてみんな戻ってこよう」、正孝君と焼け跡の整理にかかった。しかし、帰ってくる人とてなかった。山田さんは三軒両隣の消息を聞いて回った。
裏の北村判事の未亡人方は、乳飲み児を連れて、もらい乳に寄っていた若奥さんが助かっただけで、親類から来ていた人を含めて一家六人が全滅。
東隣、公証人の前田さん方では、荷物を疎開するために書類運びに来ていた使用人が死んだ。
西隣の華道教師、村田さん方は、借家の人たちを含めて4人が死亡。その隣、県庁職員の広瀬さん方は、家にいた人四人が全滅。その隣の長屋の二人、私立病院副院長の鷲尾さん方は、先生が病院で殉職。家ではお手伝いさんが即死。
その隣、身寄りのない老人兄妹が生き埋めで死亡。鷲尾先生方の奥、小島さん方は、一家全滅。その向こうの徴用にいっていた長井さん方も数人死亡。道路を隔てた向かい側の日本キリスト教会では、小使いさんと幼稚園の先生が死亡。山田さん方の向かい側、岡本米店では、奥さんと娘さんが死亡。その西隣の今井医師の留守家庭では、奥さんと京都の第三高等学校から帰ってきていた息子さんの二人とも死亡。
今井さん方の門長屋に住んでいた東京からの疎開家族三人全滅。
また鷲尾先生方の隣にいた町内会長の信藤さんは、広瀬さん方の子供を抱いて配給の知らせを町内に触れ歩いていて道路で爆弾の直撃を受けて、二人とも死亡したという。
山田さんが直接聞いて調べたところでは約40軒あった玉置町内で68人が死亡していた。
家の防空壕にいて全員無事という家は、山田さん方、筋向いの沢井さん方、米本清判事方など数えるほどしかなかった。
 「玉置町はのうなってもうた」
(次回に続く)

訂 正

前回のこの連載の中、4段目の記述で「ミキ」さんが「息を引き取った」とありましたが、実際は、現在もご存命でありました。参考資料が事実誤認だったのが原因ですが、ここに訂正いたします。
 平成の時代はこの四月末に終り、五月からは新しい年号の幕が開かれます。今、テレビでは今上天皇の退位までの人生の旅として平成時代を彩る名場面が放送されています。その一場面を見ていると、3年程前に三重県皇居勤労奉仕団の一員として友人と参加した事を思い出しました。
天皇陛下が一般参賀などで私たち国民に手を振られる皇居宮殿の広場や赤坂御用地での園遊会の場所、お田植えの場所や皇居に飾られる盆栽の手入れの場所などを15人から60人程で手分けして落ち葉拾いや草むしりを行います。
大勢で行いますのでアッという間に綺麗になります。指示される嵐のリーダーの大野さん似の宮内庁の人とも親しくなり、和やかな日々を過ごしました。きれいになった御用地から空を見た時、ビルの谷間からスカイツリーが垣間見えました。
3日目には両陛下のご会釈がありました。奉仕団は四列になり(私は2列目)、両陛下は時間通りにゆっくりと入室されて団長の挨拶を受けられます。私から2メートル程の前に皇后さまが立たれた時、私は「あっ」と息を呑み、もう一度まばたきをしました。「菩薩様だ。生きた菩薩様だ。」と心の中で手を合せました。
拝むというのは美しいもの、光を見てありがたいと思う時の動作でしょう。あの慈愛に溢れたお姿、笑顔は私の心の中に深く映像として残っています。
後のお誕生日の記者会見で天皇陛下が皇后さまに感無量で震えたお声で感謝の意を述べられています。いかに心の糧にされていたかがよく解ります。笑顔はその人柄を表し、幸せ感を与えます。 常に平和を願い平成時代が戦いのない時代であったと心から安堵されたお言葉は皇后さまの大きな支え故と思います。次期皇后になられる雅子皇太子妃はこの美智子皇后の姿を学ばれてステキな皇后になられることでしょう。皇后さまはありとあらゆるものを含んだ菩薩さまに見えました。
菩薩とはすでに悟りを開いた如来(完成者)に近い存在の方です。悟りを得ながらも自分の事よりも他者の救済の為にこの世に留まっておられます。観音様、文殊さま、地蔵さまです。
また修業者としての弥勒菩薩、法蔵菩薩がおられ、利他の心を持って道を志した者は誰でも菩薩なのです。仏様には万物の源の大日如来がおられます。そして仏教開祖の釈迦如来の左右には知恵を現した文殊菩薩、慈悲の心を現した普賢菩薩がおられます。(人が死んだ時にお迎えに来て下さる)阿弥陀如来の左右には願いを叶えてくださる観音菩薩、煩悩を消してくださる勢至菩薩がおられます。
千手観音は多くの人を救おうと数え切れない程の手を持っておられます。薬師如来の左右は日光、月光菩薩が脇を守っておられます。菩薩はおしゃれな装飾品を身につけておられます。東大寺、飛鳥寺、興福寺等のお寺を訪れた時、有り難いなあ、嬉しいなあと幸せな気持になります。
皇后さまが天皇陛下の左腕をそっと持たれる姿は何ともほほえましく、そしてお二人は私達にはやさしいまなざしで語りかけられました。
作業終了後に私達は宮中三殿の囲いの横を通ったり、松の廊下跡地や百人番所、天守台を訪ねたりして楽しく貴重な時間を過ごすことができました。
竹馬の友と私は「うん、うん」とうなずき、満たされたほっこりした穏やかな気持で帰路に着いたのでした。
日本の宗教は神仏習合の国際性を持っており、すぐれた文化遺産であります。
私は日本に生まれ、生かされて良かったなあとつくづく思いました。
 (全国歴史研究会、三重歴史研究会、ときめき高虎会及び久居城下案内人の会会員)
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