国道163号をまたぐ第二京阪道路

国道163号をまたぐ第二京阪道路

門真市と守口市の市境

門真市と守口市の市境

寝屋川を渡り、門真市に入ると、すぐ目に飛び込んでくるのが、京都市伏見区と門真市を結ぶ第二京阪道路。国道163号は巨大な高架をくぐる形で西へと続いていく。同市の人口は12万3千人弱で市域は12㎢。周辺の街と同じく大阪市のベッドタウン。電機メーカーのパナソニックの本社が置かれている(機能自体は隣の守口市に移されている)ことでも知られる。
同社が昭和8年(1933)に同市の前身である門真村に本店を移転し、工場も建設。企業城下町として栄えた。
また、昭和33年(1958)には同社創業者の松下幸之助が移住した。同氏は、当時の高額所得者1位だっただけに門真町には大きな町民税が入ることとなる。門真市史によるとその額は年間1500万円にも及ぶ。翌年の同町の収入のうち、法人税6014万円のうち、同社5071万円、固定資産税3500万円のうち同社が1670万円、町民税5773万円のうち松下幸之助だけで1600万円と大きなウェイトを占めていた。
当時の門真は、古くからの特産品であるレンコン畑が広がるのどかな風景だったが、高度経済成長期を境に急変。工業製品の需要増大や大阪市からほど近い立地もあり、地方からの急激な人口流入で、レンコン畑は工場や住宅に変化していった。当時の住民たちは、この急激な街の変化に対して歓迎ムードだったようだ。国道163号も市の都市化が南部地域にまで及ぶ呼び水となった。
その後、景気の悪化や産業構造の変化などがあり、市の財政は急激に悪化。失業者も増え、治安も悪化。現在では大阪府内で、貧しい自治体の一つに数えられており、市民の20人に一人が生活保護を受けている。こうなった理由には、流入人口の多くを低所得者が占めていたことがあげられる。当時、そのような人たち向けに安価で暮らせる集合住宅、いわゆる「文化住宅」が沢山建てられた。国道163号沿いにも、古びた文化住宅があり、市の実情の一端を伺わせる。
パナソニック以外で門真市に本社がある企業と言えば、水筒・炊飯ジャー・ポットなどでお馴染みのタイガー魔法瓶。面白いところでは、フィギュアメーカーの海洋堂。特にアニメや映画のキャラのフィギュアは精密な造形と自由自在にポーズをつけられる可動域を両立しつつ安価で購入できるとあって人気。どちらの企業も国道163号沿い、もしくはすぐ近くにある。国道が結ぶ縁によって、こういった企業の商品を、より身近に感じられるのはこの旅の収穫といえる。
国道に沿って、門真市を4㎞ほど進むと守口市との市境。これでこの日、4つ目の自治体。それほど広くない各々の市域に、人口が密集しているかが理解できる。(本紙報道部長・麻生純矢)