少子高齢化によって年々深刻化している空き家問題だが、津市でも市民から寄せられる相談数は増加している。空き家の中でも公道に面しており、倒壊の恐れがあるものに関しては「特定空家等」に指定。持ち主に対しては書面での通知に加え、直接会って適切な管理を求めるなど、地道な取組みが成果として表れている。相続の関係で空き家問題は多くの市民が当事者となる可能性を秘めている。

 

平成25年の国の住宅・土地統計調査によると空き家は全国に約820万戸。そのうち約318万戸が長期不在状態。空き家率は13・5%。同調査は5年に1回で平成30年版でも増加はほぼ確実。
この様な現状を受け、平成25年には「空家対策特別措置法」が施行され、市町村の権限が強化された。空き家の中でも特に危険であるものを「特定空家等」と認定。持ち主が改善や解体に応じない場合は住宅地の税制優遇措置を解除したり、強制的に解体を行い、費用を請求する行政代執行が行えるようになった。
津市は同法の整備に合わせて「津市空き家管理台帳」を作成。外観調査で市内の3924戸を登録。更に335件を再調査している。それら空き家に付随する所在地や所有者などの情報を関係部署で共有し、対応しやすい体制を整えている。
市民にとっても非常に身近かつ場合によっては命に係わる問題だけに、市に寄せられる相談件数は年々増加。平成25・26年度84件、平成27年度99件、平成28年度111件、平成29年度133件と平成30年度は夏場に連続して大型の台風が来たこともあり、昨年12月末ですでに184件。年度末までには29年度の倍に届く可能性もある。
相談や調査を経て「特定空家等」に認定されたものは241件。津市では、倒壊の危険性があるものの、中でも広く被害が及ぶ危険性がある公道に面しているものを優先的に認定している。
津市では認定された空き家に関して、まず登記情報や、特措法で可能となった固定資産税の課税情報などから所有者を特定。建築指導課の担当職員が書面の郵送や連絡などを行う。ただ特定空家等となるような物件は、土地の資産価値が低い場合がほとんどで、相続登記をしていないものも多い。その間に相続人の数が増え続け特定が困難となるばかりか、特定できても他県に住んでいるケースも。また、希ではあるが津市でも、会ったことすらない遠い親戚の所持する空き家を近縁者がリレーのように相続を繰り返し続けた結果、知らない間に所有者になっていたというケースが発生している。
特定空家等241件のうち、法律に基づく指導が行われたのが23件。同じく法律に基づき、固定資産税の優遇措置が外れる勧告に至ったケースは4件。93件が解体などの手段で解決済み。残る121件については改善に向けて対応中。また、特定空家等に認定されなかったものの、周囲に悪影響を及ぼす可能性のある空き家は627件あり、こちらも399件は解体や補修といった改善がされている。
津市は県内でも空き家対策で高い成果をあげているが、担当職員と持ち主が直接顔を合わせて話すことが非常に重要という。時には県外にまで足を運ぶこともある。持ち主は経済的な事情で放置していることも多いが、税制の優遇措置解除や、空き家が原因で被害が発生した場合に解体と比較できないほどの損害賠償が発生する可能性などを伝え解体を促している。
使える空き家に関しては利活用が望まれており津市では、一昨年に空き家情報バンクを市域全体に拡大。現在までに登録物件の賃貸と売買合わせて15件が成約している。 遺産相続によって、多くの市民が空き家問題の当事者となり得る。国も土地の相続登記の義務化など法改正をめざすが、問題の根本は所有者がどう対応するかにあることは変わらない。改めて、将来を見据えた上で、自分の住まいをどうしていくか考える必要がある。
危険な空き家の相談は建築指導課☎059・229・3185。
空き家情報バンクは☎059・229・3290。