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にわかに降り出した雨に車のワイパーを動かして信号待ちをしている時、路側帯のバイクのお兄さんに目が留まった。ヘルメットとレザースーツ姿は、お兄さんなのかおじさんなのかわからないが、背筋が伸びていてお腹が出ていないからお兄さんだと思われた。
そのお兄さんが、さっきからバイクのエンジンをかけようと何回もペダルを踏んでいる。バイクの右側に立ってペダルを踏みこむのが、もう十回は超えただろう。なかなかエンジンがかからない。
大型のバイクはハーレーという車種だろうか。雨はみぞれになってきて、お兄さんはさぞ冷たかろうと気にかかる。信号が変わり、私の車は交差点に進んだ。
この寒い日にバイクに乗るとは、よほど好きに違いない。原付バイクになら私も乗ったことがあるけれど、それは車の免許が取れるまでのこと。車に乗るようになってからは、雨風に体をさらして走る人の気がしれない。
普段の私は、ボタンプッシュで車のエンジンをかけている。昔のバイクのエンジンは、ああしてペダルを力いっぱい踏んでかけるものだったと、懐かしく思い出した。
次の信号で止まっていたら、ドッドッドッドという音が後ろから響いてきた。ようやくエンジンがかかったらしい。信号待ちの車の長い列の脇を、お兄さんのバイクがすり抜けて行った。(舞)
2019年2月22日 AM 4:55