【統計による世論コントロール】

(前回からの続き)
ところで、日本の総務省統計局が2017年に実施した調ベによると、日本では2613人が統計業務に携わっているそうである。
はたしてそれは、多いのか少ないのか?
私はドイツ連邦統計局のウェブサイトを参照してみた。するとドイツでは、ヴィースバーデン、ボン、ベルリンで、日本よりもやや少ない2341人が統計業務に従事している事がわかった。
ドイツでは、中立性と客観性および、科学的自立性、ならびに扱うマイクロデータに関するデータ機密性を確保し、民主的社会における情報に基づく意見や意思決定プロセスの発展に必要な統計情報を提供している。
実はドイツは、中央政府だけを比べれば日本と同水準に見えるが、各州には計6千人以上の統計職員が配置されており、日本よりも遥かに多いのだ。
また、フランスでは、フランス経済・財政・産業省MINEFIに所属しているフランス国立統計経済研究所INSEEが公的統計作成と分析を掌っており、英国でも、英国国家統計局ONSが非内閣構成型政府機関であるイギリス統計理事会の監督下にある英国議会直属の統計作成機関となっている。
くだんの総務省の調べによると、フランスでは2761人、英国では6544人の統計職員が従事しているのだ。しかもEUにおいては、6000人近い欧州統計局Eurostatで総括されて、経済統計や経済・金融収斂についての統計、貿易統計、企業統計、社会・地域統計、農業・環境・エネルギー統計を発表している。『集中型』かつ『独立型』かつ『客観的』にだ。
一方、日本では統計作業を各省庁別々で実施している。たとえば、インバウンドについては国土交通省の独立行政法人であるJNTOが扱っており、入国については法務省の入国管理局も扱っているが、このような『分散型』は、省庁間での重複や、見解の相違、また、省益を念頭に置いた改ざん等の懸念もあり、効率が良くない。統計に従事する人数も大事だが、烏合の衆は不要であり、専門性や作業効率の方がより重要である。
作業効率と言えば、ビッグデータからのデータ収集を人工知能で解析するメソッドが進捗中だ。調べてみると、金融分野では〝RegTech〟や〝SupTech〟への関心が高まっている。これは、ネット空間などに経済主体が発出するデータを、AI技術なども駆使して利用可能な形に整え活用すること、暗号技術などを活用してデータの匿名性を確保すること、そして、公的当局が分散型台帳のノードの一つに加わることで、回答側の負担を軽減しながらデータ共有を図ることなどであり、このような技術が今後の可能性として検討されている。
これらのメソッドは金融に限らない。経済産業省も商務流通情報分科会で取り上げており、広く統計全般に応用可能だ。 金融の場合、将来これが超高速取引HFTと連動したら、『独立・集中型』で『確実』かつ『高速化』が必要になるだろうが、国際貿易もそうだ。省益の為の小細工など、サードパーティとの不整合によってバレバレになるに違いない。
つまり、アンタッチャブルな専門家集団が日本にも必要になってくるのだ。嘘の統計による世論コントロールは不可能になるのである。(終)

(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)