「NPO法人ピアサポートみえ」=津市西丸之内、杉田宏理事長(37)=は、障害者の「自立して一人暮らしをしたい」という思いを実現するため、08年から市内のアパートの一室で「自立生活体験室」を運営している。障害の種類や程度を問わず利用可能で、同様の施設は県内では希少。障害者が地域で自立して暮らすノウハウを実践で身に着けられる場として意義は大きく、同法人は利用を呼びかけている。

 

トップ 「ピアサポートみえ」では、障害のある人が運営の主体となり、重度訪問介護事業などを行っている。
障害のある人は親元や福祉施設などで暮らすケースが多く、「一般の住宅で一人暮らしをしたい」と思っても、新しい環境に適応できないことなどが原因で諦める人が大半。そこで同法人では、津市の中心地・西丸之内のアパートの一室を借り、地域で自立し一人暮らしをするノウハウを実践で身に着けられる場「自立生活体験室」を運営している。
対象は障害がある人(原則、三重県在住の人)。身体・知的・精神・発達障害などの障害の種類や、程度は問わない。自分の意思を表すことができない重度知的障害や精神障害がある人も利用できる。同様の体験室は全国各地にあるが、県内では希少。
面積約49㎡で6・5畳のダイニングキッチン、12畳の洋室、手すり付きのトイレ・浴室などがある。利用料は1日千円。体験期間は1泊2日からで、相談し決める。
2008年から2018年3月まで三重県の委託事業、2018年4月から同法人の独自事業として運営されていて、近年の年間利用者数はのべ約50人~65人。
利用者は事前に障害当事者のコーディネーターと面談し、外出・料理などの自立生活プログラムを自らの意思で決定。それに基づき、ヘルパーの介助を受けながら一人暮らし体験を行う。
そして、例えば食事の買い出しでは食材の適切な量はどれくらいかなど、様々なことを自分の責任で選択・決定。失敗することで自立に向けた課題の発見ができて、成功が達成感と自信に繋がるという。
先月、障害のある高校生と親が見学に訪れ、親は「子供の卒業後の生活を検討している。施設やグループホームも考えていましたが、体験室の存在を最近知り、一人暮らしという選択肢が増えました」と話した。
一方、障害者自身が一人暮らしする意思を固めても、家族や、住みたい物件の大家の理解が得られなかったり、物件をバリアフリーに改装するのが費用面で困難などの理由で、実現できないケースも多数。
そのため体験室利用を経て一人暮らしをした人もこれまでに約10名と多くはないが、杉田さんは事業の意義を「障害がある人一人ひとりやその家族に、本人が親元や施設以外の場所で暮らすことを選択する機会を提供するというのは、(成功事例の)数だけでは計れない、とても大事なこと」と力強く語り、利用を呼びかけている。
問い合わせは☎059・213・9577へ。見学も随時行っている。