発達障害のリアルを当事者・専門家らが語る対談連載。発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違うために幼いうちから現れる様々な症状。出生率は数十人に一人と言われる。前回に続き、発達障害者の言葉・コミュニケーション能力の支援を当事者の母・亀田佳子さん、特別支援学校教諭の石井幸仁さんが語る(敬称略)。

当事者の親と教諭が語る

亀田佳子 さん 三重県在住。三男が最重度判定の知的障害があり自閉症。子育てに不安を感じ参加した県外の勉強会で息子とのコミュニケーションには視覚的な支援が有効と知り、2002年地元で勉強会を発足。

亀田佳子 さん
三重県在住。三男が最重度判定の知的障害があり自閉症。子育てに不安を感じ参加した県外の勉強会で息子とのコミュニケーションには視覚的な支援が有効と知り、2002年地元で勉強会を発足。

亀田 息子の知的レベルから考えて、小学校時代は当初、学校や家での一日の流れすら意味理解していなかったと思います。コミュニケーションを学ぶ前に、学校に行く意義を分からなきゃいけないから、朝の会などの絵や、全ての教科書の写真を用意し、先生にお願いして毎日、時間割に合わせ教室内に提示してもらいました。家でも、登校前や下校後の予定を毎日、視覚的に伝え続けました。各活動の「終わり」が分かることで、一日の流れも分かっていくのではと考えたからです。
その結果、息子は一日の流れがあるということを、徐々に、なんとなく理解したようです。
石井 適切なコミュニケーションの積み重ねによる効果ですね。
亀田 そうですね。そうやって幼い息子は、身の周りの、訳の分からないことだらけだった世界のことを徐々に理解し、絵カード・写真・筆談で意思を伝えようとするようになりました。
当時はそれで癇癪の回数が減り落ち着いてきたのですが、成長するにつれ語彙が増え、感情も複雑化して、言いたいことが増えています。表現するための写真などを増やしているのですが、数が多すぎて追いつかない。そのため私と息子の間で意思疎通ができないということが日々起きて、葛藤があります。

 

 

肯定的に話し安心感を

石井幸仁 さん
三重県立松阪あゆみ特別支援学校教諭。発達障害の人などが対象の、絵カードを使ったコミュニケーション学習「PECS(ペクス)」の普及に取り組む「三重PECSサークル」の代表。

石井 子供がこれをしたいという願いを伝えてきたときに、いつ叶えられるか見通しを伝えず、「今はだめ」などと否定するだけだと、子供は不安になり確認行動に走る。例えばジュースが飲みたいのにいつ飲めるのか分からないと、「ジュース!」と連呼したりします。
私が以前小学部で担任したある児童は、言葉を話せるんですが当初は全く自分の意思を伝えず、授業にも参加せず走り回っていました。しかし「PECS」を活用し見通しを示して指導したところ、1時間の授業の中で目的を持ち、終了時間まで参加できるようになりました。そして集中し参加できる授業が増えて、最終的には、3週間後の卒業式で好きなDVDを観るのを目標にして3週間も頑張ることができたんです。このとき「子供は、良き見通しがあり、学習を積み重ねることができて、安心感があれば頑張れるんだ」と実感しました。
亀田 私も、肯定的に話すことを心がけています。子供の問題行動には、きっと理由がある。例えば延々と手を洗っていて、理由は石鹸を使い切ってしまいたいからとか。だったら石鹸を小さくしてあげたら済みますよね。子供の言動の理由を色々な視点で考えて安心させてあげることは全部、親と子供のコミュニケーションになります。
発達障害などの障害がある子や、障害の程度が重い子も、上手く表出できないだけで色んなことを考えたり思っていることを皆さんに知ってほしい。障害がある子も、自分に合うツールを使えばコミュニケーションできる能力はきっと持っていると、私は考えています。
(第3回終わり)