国道165号の道路標識(津市高茶屋小森町付近)

国道165号の道路標識(津市高茶屋小森町付近)

紀勢本線を越えてしばらく進むと、再び165号の本線の歩道へ戻り、西へと進む。間もなく、国道を示す道路標識を発見。国道好きにはたまらない〝おにぎり〟で心の栄養補給を行った。
三重県警察学校の前を通り過ぎると、この辺りも新たに商業スペースとして開発が進むなど、少しずつ景色が変わっている。国道側の店舗壁面に時給が貼り出されているので読むとアルバイト募集の掲示があり、高校生900円、一般950円と書かれている。最低賃金が846円に対して、妥当な額ではあるが私たちが学生だった20年以上前は、高校生の時給はせいぜい700円台。時の流れを感じると同時に、少子高齢化で働き手不足が深刻化する中、労働力そのものの価値が高まってい

国道165号と国道23号中勢バイパスの交差点

国道165号と国道23号中勢バイパスの交差点

るということでもあろう。額面がアップすること自体は重要だが、もっと大切なのは、それで何ができるのか、さらに言えば心の豊かさに繋がっているかである。
いくら考えたところで答えが出ないが、パスカルの「人は考える葦である」という言葉通り考えることこそ、人の最大の武器である。現代社会のスピーディーな流れから外れ、自分の足でゆっくりと歩みながら考えると、人間にとって適切な本来の時の流れを感じることができる。
そのまま国道を西進。間もなく、肉まんやあずきバーなど数々のヒット商品でその名を轟かせる井村屋の本社工場、その向かいには、世界中のプロの信頼を集める建設・配管工具の製造などで知られる松阪鉄工所。津市民にとっては、見慣れた風景。しかし、この国道の遥か先で暮らす人々の中には、両社の商品を知っていても、見慣れた道の先で作られていることは知らないかもしれない。逆もまた然りで、この道の先でも、きっと同じようなことがあるはず。私が、この旅を通じて伝えたい既知の向こうにある未知とは、このようなものたちである。
更に進むと、国道23号の中勢バイパスとの交差点に差し掛かる。大きな新しい歩道橋がかかり、ここから南の松阪市方面へとつながる道は陸橋がメイン。接続の形といい165号と比べると土木技術の進化は一目瞭然。道は多くの人の思いが踏み固められ、形になるがそれをなし得るのは人の業を置いて他にない。
中勢バイパスの全線開通までには、まだ時間が必要だが、この区間の連結によって、国道165号の価値が大きく高まったといっても過言ではない。三重県の南北を縦断するこの道は、現代の参宮街道という一面も持っている。前回、紀勢本線のルーツである参宮鉄道の話をしたが、今も昔も伊勢神宮は人々の心の拠り所であり続けているなによりの証拠でもある。
(三重ふるさと新聞報道部長・麻生純矢)