交通事故や犯罪に対する不安から防犯カメラの需要が高まっている。津市では開会中の津市議会に提出している新年度予算に「防犯カメラ設置補助事業」を計上。可決されれば、今春から自治会などを募集していく見込みだが、カメラの導入に当たっては、設置場所の検討と地域住民の同意、不特定多数が映る映像の管理など、クリアすべきハードルも高いため、入念な準備と相応の責任を求められる。

 

 

低価格化・高性能化が進む防犯カメラの普及は急速に進んでいる。それに比例して、自治会でも防犯目的で導入を試みるケースが増えており、県内でも四日市市などが先行して設置補助事業を行っている。
津市では今議会に設置支援事業案の予算300万円を計上。自治会や防犯団体など対象に防犯カメラの購入費用の「最大2分の1、15万円上限の補助するという内容。議会で可決されれば、今春より自治会や防犯団体を募っていく。
しかし、不特定多数の人間を映す防犯カメラは正しい運用をしなければプライバシーの侵害などを引き起こすため、適切なルール作りは必須。そこで、津市はここに至るまでに、警察、自治会関係者、PTAなどで構成する「犯罪のない安全・安心なまちづくり推進協議会」を設立。事業化する前に防犯カメラがもたらす効果や課題点を調べルールづくりに役立てるため、市内の自治会や防犯団体の11団体の協力を受け、通学路を中心に防犯カメラと看板を設置し、実証実験を実施。
設置した付近ではゴミのポイ捨てが減ったり、安全運転が増えるなどのモラルの向上や犯罪の抑止などは期待通りの効果があった。一方、浮き彫りとなった課題点は、効果の裏返しといえる。
防犯カメラの設置に当たっては、プライバシーの塊である撮影した映像データの漏洩などを防ぐ管理責任者と、カメラの取扱操作人を決め、地域住民で綿密に話し合った上で設置場所を決める。しかし、いざ設置すると、映りこみが気になる住民から、配慮を求める声があり、対応したケースもあったという。また、精密機械であるため、適切な管理が求められることはもちろん、撮影した映像はSDカードなどのメディアに記録されるタイプだと、パソコンでそれを確認できる人が必要となることも高齢者を中心とした自治会では課題にあがった。
三重県でも防犯カメラの設置・運用ガイドラインを策定し、それをわかりやすくまとめたガイドブックも作成し、ネット上でも公開している。津市でも議会で可決され、自治会などを募集する場合には、実証実験で得た留意点などをまとめた手引書で、注意を促すことも考えている。
設置してしまえば役割を果たす防犯灯などと違い、防犯カメラは、使い方を誤れば諸刃の剣にもなり得る。導入を考える自治会などでは設置場所を決める際、多数決ではなく、少数の意見にも丁寧に応えないと住民同士のトラブルの原因になるだけでなく、場合によってはプライバシー侵害によって訴訟にまで発展するケースもあることを考慮し、慎重に運用する必要があるだろう。