きものひろば・奥田さん(津市久居烏木町)

きものひろば・奥田さん(津市久居烏木町)

昭和59年ごろの旧国道165号の一本松(津市HPより)

昭和59年ごろの旧国道165号の一本松(津市HPより)

国道23号中勢バイパスを超えると旧久居市。国道の歩道を井戸山町、野村町と進んでいく。国道に沿って、店舗が並んでいる。それぞれが個性溢れる飲食店なども多く、時間さえあれば、ついつい立ち寄りたくなる。
津市久居体育館の辺りで国道は高架になっているので、導かれるままに側道に入り、近鉄名古屋線を超えるために歩道橋を渡る。長年、津市を走り回ってきた私もここを歩くのは初めて。階段部分は錆びて塗装されている表面が剥がれ落ち、相応の年季を感じる風貌。多分、地元の人以外は日常的に、この歩道橋を利用することは多くなさそうなので、この上を通った人の数以上に、この下を通り過ぎていった人の方が多いだろう。私も車で高架の上は何度も通り過ぎたことがあるし、下を電車で通り過ぎたこともある。身近な未知が一つ既知へと変わった瞬間と言えるだろう。
高架を抜けると、再び国道の歩道へ。北口町から烏木町へと進んだ後、国道沿いの一軒の店に立ち寄ろうとするが、あいにくの定休日でシャッターが閉まっている。
お休みに、わざわざ連絡するのはばかられたので、少し先でしばらく腰を下ろして休憩していると、スマートフォンに着信あり。すぐに電話を取ると「さっき165号沿いのところに座ってへんかった?」と元気いっぱいの声。そう、先ほど立ち寄ろうとした呉服店・きものひろば社長の奥田浩明さんである。
国道165号沿いに和装させたマネキンが看板代わりに並べられてるのをご覧になられたことがある方もいらっしゃるのではないだろうか。奥田さん自身も明るい性格で地域のイベントで活躍したり、子供たちにバスケットボールを教えたりもしている。後日改めて、国道165号についてお話をお伺いすると「元々久居のメインストリートは、一本松の方の道やしな。今の165号は新しい道で、うちの店も新参者で気が付けば周りの景色もずいぶん変わったなぁ」と話す。この一本松の方の道こそ、旧国道165号で現在の県道24号。一本松とは長らく久居のランドマークとして、愛されていた松の木のことで15年ほど前に伐採され、今は石碑を残すのみ。津市のHP上の「津市の今昔景観集~久居編」に一本松の姿と共に当時の国道沿いの活気ある姿が確認できる。国道の今昔もまた、旅に彩りを添えてくれる。(本紙報道部長・麻生純矢)