三重を刺激する大人のローカル誌「NAGI」(月兎舎)の春号(創刊20周年記念号)を紹介。特集1は「手から生まれる」…「機械やロボット、海外での工場生産が当たり前となった時代に、手仕事に誇りを持って取り組む作家や職人がいます。手から生み出されるものには、大量生産の工業製品にはない温もりや揺らぎがあるのが魅力ですが、一番は作者がそれまでに得た見識や経験が美しく凝縮されているからではないでしょうか。
身近にいる人が作り出したものは、暮らしの中で用いるたびに大切に使い続けようと思わせてくれます。使い捨てが前提の100円ショップの商品では、こうはいかないでしょう。今回は作り手の人柄がにじみ出る木、土、金属、ガラスなどの生活用品を紹介。ヒトとモノとのあるべき関係や、手仕事の役割をいっしょに考えたいと思います」と話す。
〈長く使いたい生活工芸品の作り手9人の紹介〉の中で、本紙配布エリアからは、一枚の金属板を金づちなどで叩き込み、様々な形を造り出す「鍛金(たんきん)」作家の何惠娜(カ・エナ)さん(津市)をピックアップ。東西の伝統技法に遊び心を足すという技法を駆使し、ジュエリーやカトラリー、ランプシェードなど魅力ある作品群とともに、アトリエで創作活動に励む何さんを取材している。
このほか、「藍染め」の岡博美さん(津市)も紹介している。
特集2は「ウサギ小屋の20年」…独自のスタンスで発行を続けてきた同誌の全著作物を紹介しなら20年の歴史を振りかえる。
B5判、104頁。税込720円で県内の書店、道の駅、一部スーパー(ぎゅーとら、マックスバリュ)などで販売。
問い合わせは、月兎舎☎0696・35・0556へ。

伊勢自動車道西側の国道165号沿いの風景

伊勢自動車道西側の国道165号沿いの風景

帽子を被ったお地蔵様(津市庄田町)

帽子を被ったお地蔵様(津市庄田町)

2月26日9時。国道165号を終点から遡る徒歩旅2日目。晴天。近鉄久居駅前に車を停め、徒歩で前回のゴール地点である伊勢自動車道久居インター付近まで戻る。
本日の目標は、ここから青山峠を超えた先にある近鉄大阪線の西青山駅まで約24㎞。距離もさることながら、難所青山峠が控えているため、かなりハードな一日となる。体力に自信はないが不安はない。なぜなら、人生はなるようにしかならないが、必ずなるようにはなるからだ。
早速、歩き始めた私は、伊勢自動車道の高架をくぐり西へと進んでいく。道路標識には名張の文字。津の外がようやく彼方に顔を出し始めた。10年ほど前に、スーパー、ホームセンター、飲食店などが並ぶ商業スペースが開発されたおかげで、インター西側の国道沿いも一昔前と比べると幾分にぎやかになっている。
この商業スペースのちょうど背後に広がる風早団地の奥にある「かざはやの里」では、この時、ちょうど梅が見頃を迎えていた。伊勢温泉ゴルフクラブの敷地の約半分に500本もの梅が植えられており、見応えは抜群。ゴールデンウィーク頃の藤、梅雨の紫陽花と共に毎年多くの人が訪れる165号付近の人気スポットの一つである。
更に西には、様々な企業の工場が立地するニューファクトリーひさい工業団地。そして津市の新名所として遠方からも多くの人が訪れるおやつタウンも、国道のすぐ近くにある。このような情報は、津市民であれば、皆さんがご存じであろう。だから私が本当に伝えたいのは、もっと〝些末〟なこと。普段、車で走っていても気づかず、通りすぎてしまっている景色の中にこそ、〝未知〟が存在しているからだ。
例えば、1日目も含めたここまでの行程。道路に沿って歩道が途切れず存在していることがなによりもありがたかった。国道163号を踏破した前回の旅で実感したが、歩道のある区間は道路の総延長に対して、わずかである。1960年代のモータリゼーションの台頭によって、車と歩行者の接触事故を避けるため歩道は普及したが、土地の狭い日本では、道路の幅員にも限界がある。そもそも私を含め、田舎の人間ほど日常的に歩かないので、歩道という存在は設置から保守まで考えると、コストパフォーマンスが非常に悪い。人口が多く交通量の多い区間や安全を確保したい通学路が中心となるのは致し方ないといえる。
ただ実際に自分が歩くとなれば話は別。歩道のない道路は歩行者通行禁止ではないが、単純に危険である。白線の内側の路側帯すらない場所も多く、細心の注意を払うのは当然としても、最後はドライバーを信じるしかない。だから、読者の方には、まかり間違っても、私と同じように国道を歩いて追体験しようとは考えないで頂きたい。
ようやく津市庄田町の交差点。ここから先は、いよいよ歩道が消える。危険地帯突入前に気を引き締めるべく軽く頬を叩くと、交差点の南側におあつらえ向きにお地蔵様がまつられているのを発見。すぐに駆け寄ってみると、交通安全と書かれた台座の上に鎮座するお地蔵様はなぜか深々と野球帽をかぶっている。車で何度もここを通ったことはあるが、初めて気が付いた。
私はお地蔵様の正面に立つと、慇懃に一礼し、手を合わせ道中の安全を祈る。敬虔な心持ちで祈ろうとしたが「よく見ると帽子だけでなく、赤い前掛けと数珠の首飾りも洒落ているな」、「帽子にはどんなエピソードがあるのだろう」などと、妄想は膨らむばかり。当然、お地蔵様はそんな不心得者の心中など、お見通しであろう。しかし「お地蔵様がそんなつまらないことで怒るはずもなく、必ず守ってくれる」と言ってのけてしまうのが不心得者が不心得者たる所以である。冗談はさておき、いよいよここからが本番。油断は禁物だ。(本紙報道部長・麻生純矢)

三重県総合博物館が第27回企画展「名所発見、再発見!~浮世絵でめぐる三重の魅力~」を開く。会期は4月18日㈯~6月14日㈰まで。
江戸時代の三重は、東西の大動脈である東海道が通るほか、伊勢神宮、さらに熊野や西国三十三所の参詣に、人々が集う地だった。
古くから和歌に詠まれた名所のほか、江戸時代に新たに見いだされたり、再認識されたりした名所も少なくない。そこには、挿絵付きの地誌『伊勢参宮名所図会』や広重らが描く宿場や二見浦などの浮世絵(名所絵)が大きな役割を果たした。
同展では、今も昔も旅の楽しみの一つ、名所の魅力を、三重の浮世絵を中心に紹介する。
観覧料(カッコ内は基本展示室とセット観覧券)=一般800円(1050円)、学生480円(630円)、高校生以下は無料。
◆記念講演会◆
5月17日㈰13時半~15時まで。演題「名所図会から風景画へ ―歌川広重の作画手法―」。場所=3階 レクチャールーム。
講師は大久保 純一氏(国立歴史民俗博物館教授)。定員80名(事前申し込み)締切4月26日。
◆ミニレクチャー&ギャラリートーク◆
4月25日㈯・5月24日㈰・6月13日㈯…各日とも13時半~15時まで学芸員による展示解説あり。
場所=3階 レクチャールーム・企画展示室。定員25人(当日受付・先着順・企画展の観覧券が必要)。
月曜休館(5月2日は除く)、5月7日㈭。
問い合わせは☎059・228・2283。

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