2020年7月

青山峠の電話ボックス

青山峠の電話ボックス

暗闇に浮かび上がる緑色のなにか(近鉄西青山駅前)

暗闇に浮かび上がる緑色のなにか(近鉄西青山駅前)

青山トンネルを抜けると、いよいよ伊賀市。時刻は17時45分。近鉄西青山駅まで残り3㎞ほど。間もなく日没ということもあり、ようやく市境を超えたにも関わらず、感動がまるでない。
市境を超えて間も無く心霊スポットとして名高い電話ボックスが登場。夜中に女の人が立っていたり、突然呼び出し音が鳴るといった噂話があるが、正直構っている心の余裕がない。流石に無視するのも申し訳ないので、おざなりに写真を撮り、前を通り過ぎる。
ここからは下り坂。しばらく歩道が続いていることは体力的にありがたい。しかし、そんな安らぎも束の間。すぐに歩道が途切れてしまう。
暗がりの中、ドライバーが私を見つけるのは至難の業。全く見えていないことを前提にしながら、これまで以上に神経を張りつめて進まなければならない。こんな時間に、こんな場所を歩いている人間がいるとは思うまい。少し先に車のヘッドライトの光が見えると、大きく避けた上で立ち止まる。これまで通りの動作だが体力と精神の限界が近づいているので同じことをするのもかなり辛い。だが、ゴールは目前。焦らず一歩ずつ進むのみである。
国道沿いの廃墟に目をやると、在りし日は飲食店や宿泊施設だったようだ。今では、人影すらない寂しい地域だが、ひと昔前は、こういった商売が成り立つ時期もあったのだと思うと、人の世の無常さを感じずにはいられない。道は多くの人々の思いが具現化した存在だと何度もお話しているが、この廃墟は、その道を行きかう人同士の交差点だったのだ。時代の流れと共に人々の価値観が変わり、交通手段と共に人の流れが変わり、無数の事象が流転するこの世界にあって、この道さえも不滅の存在では無く、人々に必要とされ無くなれば、あっという間に自然に飲まれてしまうだろう。そもそも私自身の生命でさえ、今この瞬間に存在しているということ以外は全く分からない。そう考えると、日が沈み暗闇の中で、踏み出す一歩すらも、とても貴重な経験に思える。
闇の外套をまとい、ヘッドライトの群れをいなしながら進み続けると、ようやく虚空に浮かぶ西青山駅の灯。その光景を撮影した後、無人の改札を通り、ホームに上がる。そこで一息つきながら、妻に無事を報告するために、撮影した写真をラインで送信する。すると、すぐに返信。「なにコレ…幽霊?」。慌てて写真を見ると、確かに国道の上に緑色の物体が3つ浮遊している。
さんざん心霊スポットを興味なさげに通り過ぎてきた私に対するあの世からのアピールなのかもしれない。そう言われたところで「カメラの暗所撮影モードのバグによるノイズだろう」と全く意に介さない訳だが…。
「次はここから名張駅まで歩こうかな」。ぼんやりと、次の行程を思い浮かべていると電車が到着。私はよろめきながら、電車に乗り込む。
この日の行程は、本居宣長の菅笠日記に記された一日目に近いというお話をしたが、彼はもっと先の阿保宿まで歩いている。完敗の一言だ。(本紙報道部長麻生純矢)

「みんなの願いを煙に変えて天の川に届けます」
「つ七夕まつり連絡協議会」は「七夕願い事大募集」を受け付ている。後援=津市・津市教委・津商工会議所・津市観光協会。
同協議会は、津青年会議所、津商工会議所青年部、松菱、大門大通り商店街振興組合、丸之内商店街振興組合、津観音、津新町通り商店街振興組合、津市観光協会の8団体で構成。毎年7月7日に「つ七夕まつり」を開催してきたが、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から今年は中止となった。
子供達に季節を感じ、未来への希望を持てるような機会を作ろうと、実行可能な内容をとして今回、願い事を募集することにした。
本来ならば、岩田川に流すはずだった短冊を預かり、8月9日に津観音で行われる十日観音で焚き上げ、願いを煙に変ええて天の川に届ける。。
密集を避けるため、お焚き上げの様子はインターネットでも配信する予定。お焚き上げ当日の持ち込みは不可。
短冊は長辺30㎝程度までの紙製(ビニールなど不燃性の素材は不可)で、ホッチキスの使用や短冊以外の飾りや笹などは受付不可。また、個人情報は書かないようにとのこと。
募集期間は7月31日㈮まで。応募は、郵送(7月31日までの消印有効)または応募箱で(設置場所=津観音・街の駅だいもん・大門いこにこ広場・津市観光協会・松菱・岡本総本店・ちぃずばるーん・別所時計店)。
郵送先=〒514─0027、津市大門32─19、津観音「つ七夕まつり連絡協議会 願い事受付」係へ。問い合わせは同協議会☎059・246・9020。

新型コロナ感染防止策が不可欠

 

今年も大雨や台風による被害が危惧される季節になってきたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止策を万全にした避難所運営が求められている。津市でも避難所にマスクや消毒液などの配備を進めたり、三密に配慮した運用を行うなどの対策を進める。最も恐ろしいのが市民が感染を恐れる余り、避難所に行かずに被災すること。市民一人ひとりがどのような行動が必要かを改めて考える必要がある。

 

政府の緊急事態宣言が解除されて以降、新型コロナウイルス感染拡大防止策を踏まえた新しい生活様式が取り入れられており、マスクの着用や検温など、「三密」を避けるソーシャルディタンスの確保などが一般化している。

政府もこれに基づく、災害時の避難所運営の必要性を事務連絡。2mのソーシャルディスタンスを確保すると一カ所あたりの収容人数が大きく下がるため、出来る限り多くの避難所を開設することや、避難所の過密化を防ぐために安全な場所にある親戚や友人宅への避難も検討するよう勧めたり、避難者の健康状態の確認と体調不良者への対応といった内容で、全国の自治体は、それを踏まえた対策や情報発信を行ったり、新たなマニュアルの作成などに取り組んでいる。
津市には172カ所の指定避難所があり、学校や公民館などが主。毎年、夏には台風や大雨による被害が発生しやすくなることもあり、今日まで開催中の津市議会でも多くの市議から、当局に対して避難所運営に関する質問があった。
津市が実施する対策としては、各避難所にマスク・アルコール消毒液や、段ボールベッド・テントなどの設置を行う。また、避難所を運営を行う職員向けマニュアルも先述した国の事務連絡に合わせたものを作成し、それに基づく運営を行う。
換気、マスク着用、ソーシャルディタンスの確保など三密を避ける対応を基本に、受付時の体温測定や消毒を実施し、体調不良者が出た場合は隔離も行う。
収容人数が下がった分、体育館で収容できない場合は教室などを活用したり、周辺の避難所を開設する。
また、必要によっては指定避難所以外の市や県の公共施設などを活用したり、三重県と協定を結ぶ三重県旅館ホテル生活衛生同業組合に加入している宿泊施設の利用なども検討していく。
地域の自主防災組織が避難所ごとに定める避難所開設マニュアル作成の手引きも更新を行うべく準備を進めている。
最も危惧すべきなのは、市民が新型コロナ感染を恐れる余り避難せずに被災してしまうこと。行政が安心で安全な避難所の体制を整えることと同じくらい、市民一人ひとりの心構えも重要となる。洪水など各種ハザードマップを見て、自宅がどのようなリスクに見舞われ、どこへ避難しなければならないかを改めて認識したり、災害の規模が大きい場合は利用する可能性のある周囲の避難場所の確認、避難所の代わりに安全な場所にある親戚や友人の家に避難する場合はその順路なども決めておくことが必要だ。
非常用持ち出し袋にマスクや消毒液を新たに加えることなど手軽にできる対策も感染リスクを下げるのに有効。
いつどんな災害が起こるかは、誰にも予想できない。新型コロナ対策との両立が課題となるが、台風や集中豪雨による急な川の増水や土砂災害が発生の恐れによる避難勧告や、より多くの人々が被災する可能性が高い南海トラフ地震などで避難が必要になった場合、まずは最寄りの避難所を目指すという考え方自体は変わらない。
今後、行政によるより万全な避難所運営を行う体制づくりをするため、シミュレーションや収容人数の確認なども必要となろう。そして、なによりも市民の冷静で的確な判断と対応こそが重要といえる。

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