10月11日の射山神社での奉納めざして練習に励む住民ら(榊原第2区集会所にて)

10月11日の射山神社での奉納めざして練習に励む住民ら(榊原第2区集会所にて)

三重県津市榊原町の射山神社で10月11日に開かれる秋祭りで榊原第2区の「かんこ踊り」が復活、新型コロナウイルス平癒を願い、31年ぶりに奉納される。過疎化と少子高齢化が著しい同地区の住民が一丸となって復活させた。
榊原温泉で知られる榊原町の伝統芸能として知られる「かんこ踊り」は江戸時代に発祥。地域の繁栄と疫病封じを願い、町内5自治区それぞれに伝わる歌に合わせ鳥の羽根を頭に付け、鞨鼓と言われる太鼓を鳴らしながら踊る。5区全てが津市の指定無形民俗文化財。
毎年、秋祭りに全地区が揃う「五郷入り」を奉納していたが、過疎化と少子高齢化で踊り手が減少し、「五郷入り」は平成元年を最後に一旦、途絶えた。その後、平成6年の「まつり博・みえ」で復活・披露して以降は、第1区の保存会が3年に1度のペースで踊っていたほか、第2区のかんこ踊りは平成14年頃まで地域の夏祭りで踊るのみで、その後は休止状態になっていた。
そこで、「五郷入り」を復活させ榊原町を盛り上げようと、地域の住民が一丸となって平成28年度の国の地方創生加速化交付金を活用し、約1千万円かけて太鼓や装束を新調。同29年は1区、一昨年は3区、昨年は5区が奉納した。
榊原町第2区かんこ踊り保存会の伊藤博和会長によると、「経験者の話と古いビデオや写真を参考に4月から土日に練習を重ねてきたが、新型コロナウイルスの影響で6月初旬に中断、同月中旬から再開し準備してきた」という。
奉納踊りには小学生から大人まで45名が参加。伝統的に男性のみだったが、今回から始めて女性も5名加わる。
12日の夜に同地区の集会所で行われた練習では太鼓のほか、横笛、ほら貝の奏者と、合いの手を入れる「地謡(じうたい)」、歌い手の「唄上」で編成。しゃご馬に続きかんこ役が踊り修練を重ねていた。
当日は「疫病神をおさえつつ─」という歌詞がある「天王踊」を奉納し、新型コロナウイルスの早期終息を祈願する。来年には4区の奉納を予定し、令和4年に5区全てが復活した後には、同神社で平成元年以来の「五郷入り」が実現する。また、同年にリニューアルされる「湯の瀬」でも披露される予定。
伊藤会長は「昔からかんこ踊りによって地域の絆を高めていたという伝統がある。この伝統を後世に伝承する意味でも復活は重要。五郷入りを目指し頑張ります」と期待した。