香ばしい匂いが細く開けた車の窓から入ってきて、うなぎ屋に気が付いた。昼日中、太陽に照らされながら店の前に並ぶ人たち。まだまだ暑いからうなぎを食べたくなる気持ちはわかる。「かなりの待ちだね」と眺めながら、お腹が空いていることに気が付いた。うなぎ屋の煙には引力がある。
それでも炎天下に客を並ばせるという店のやり方は受け容れ難い。スマホでお知らせとまでは言わないが、整理券を配ったり順番シートに名前を書かせたりならできるだろうに、なぜ日差しの下で行列を作らせるのか。
「並んでまで食べたくないよね」と言いながら、今時はそうでもないことを思い出した。いつも行く小さなパン屋の前にも数人の行列があったりする。店が狭いので、密にならないよう外で待たないと入れない。
肉屋もそうだ。歩道にディスタンスを保つためのテープがあって、それに従って皆さん行列を作っている。案内されて数人ずつ店に入っていくが、それでも陳列ケースの前は結構な混雑だったりする。
行列は嫌だとはもう言っておれない。行列を作るのも新しい生活様式だ。新型コロナは、ある程度は自身の行動で防御できる。もちろん気を付けていても感染することはある。だから感染させないようにも気を付ける。行列も受け容れなければならないと思う。
(舞)