海を渡る蝶として知られる「アサギマダラ」が津市にも飛来している。県外からも見物客が訪れる津市の観光資源として注目が集まる中、市内では美杉町を始め、アサギマダラが集まるフジバカマ畑は増えているが、今年は開花が少なく苦戦を強いられている。また、将来的な展望を考える上、畑の整備の継続など課題も浮上している。

 

 

 

フジバカマとアサギマダラ(里の丘広場で撮影)

フジバカマとアサギマダラ(里の丘広場で撮影)

アサギマダラは、羽を広げた大きさが10㎝ほどになる大型の蝶。その特徴はなんといっても、沖縄から北海道、遠くは台湾まで海を越えて旅をすること。フジバカマなどのキク科植物の花の蜜を求めて集まる。
津市内では、平成22年に津市美杉町太郎生の地元住民らでつくる団体「太郎生道里夢(タロウドリーム)」が休耕田にフジバカマ畑を整備したところ、開花する毎年10月~11月初旬頃にアサギマダラが飛来するようになり、県内外から多くの見物客が訪れている。そこから年々、美杉町内外で個人・団体が鑑賞スポットを整備。しかし今年は、その多くが酷暑や台風といった気象条件の影響や連作障害で例年と比べて開花が少なく、蝶の飛来数は減少。一筋縄ではいかない自然の厳しさに直面している。
現在、市内で多く蝶が飛来しているのは、津市一志町波瀬の地域住民有志でつくる「里山ファンクラブ」が集落の入り口に整備した「里の丘広場」のフジバカマ畑。連日見物客が訪れている。
美杉町太郎生の中原孝夫さんが整備した愛和園も1400㎡の土地にフジバカマ約1000株が植えられており、今週から来週に花が見頃を迎える見込み。蝶の飛来の増加にも期待している。
アサギマダラの生態は未知な部分もあり、学術的にも注目されていることから、「花街道朝津味」=津市高野尾町=は、三重県総合博物館と連携した「アサギマダラプロジェクト」を展開。施設隣にフジバカマ畑を整備し、飛来スポット化をめざす。鑑賞のために無料解放しており、地元の高野尾小学校の児童の環境学習も行っている。今後はフジバカマの園芸種ではなく、環境省のレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されているフジバカマの原種かつ三重県産の栽培を検討。生物多様性の保全との両立も視野に入れる。
鑑賞スポットが増える一方、少子高齢化が進む中、フジバカマ畑の維持管理は個人や団体の動員力や経済力頼みで、継続性に課題を抱えている。こういった実情を踏まえ、太郎生道里夢では、地元以外の協力者やスポンサーとなる企業を募り、巨勢木材店近くの畑やその周辺の整備をイベントとして楽しみながら行うなど、持続可能な発展を見据えた仕組み作りにも取り組んでいる。
津市の観光資源としてアサギマダラを育てるためにはこういった課題のクリアは必要。栽培費用の補助など、一歩踏み込んだ行政のバックアップも求められよう。